経済現象を対象として,統計調査によって得られた結果を数字で表現したものをいう。統計調査には全数調査と標本調査の二つがある。全数調査はセンサスとも呼ばれ,たとえば国勢調査では全国の全世帯,事業所統計では全事業所というように,対象となる客体をすべて網羅している。全数調査は国の基幹となる統計であるが,多くの経費や時間を要するので,毎年ではなく5年とか3年おきの調査が多い。標本調査は母集団の中から比較的少数の標本を抽出し,その調査結果をもって全体を代表させるもので,経済統計の多くはこれに該当する。また通常の経済統計は,調査結果をそのまま一定の基準によって整理した1次統計である。この1次統計をさらに加工・調整したものが加工統計である。たとえば国民所得統計は,多数の1次統計を国民所得の概念に合わせて推計した代表的な加工統計である。
経済統計の分類には一定の基準があるわけではなく,利用上の観点から区分することになる。産業別に分類すると,第1次産業(農業,林業,水産業),第2次産業(鉱業,製造業,建設業),第3次産業(卸・小売業,金融・保険業,運輸・通信業,サービス業など)に分かれるが,第1次および第2次産業は生産統計が中心で,量的および質的にも優れている。これに対して,比較的整備が遅れているのが第3次産業に関連した統計で,とりわけ異種異様の業種から構成されるサービス業では体系的な統計が乏しい。産業分類に属さない部門としては,人口,労働,貿易,物価,家計,企業などの統計がある。一方,需要別に分類することもできる。これは個人消費,設備投資,住宅投資,財政,輸出入などといった区分で,それぞれが多くの個別統計から構成される。たとえば個人消費の場合には,商業統計や百貨店統計のように物品を販売したもの,逆に家計調査統計のように購入したものを対象にした統計がある。また設備投資の場合には,各種の受注統計,着工統計,完工統計が含まれる。
統計は官庁,政府機関,民間で作成されるが,その大半は中央官庁である。官庁統計には国→都道府県→(市町村)→調査員→調査客体と,国→地方支分部局→調査客体という二つの調査体系がある。このほか,地方公共団体が地方経済統計を作成するため独自の調査を行う場合もある。調査結果は各統計作成機関がそれぞれの統計資料により発表しているが,主要な経済統計を集大成した統計書が年報または月報形式で発行されている。
統計は主として月次,四半期,年次,特定年次のデータに分かれる。月次および四半期データは短期的な経済動向を把握するのが目的で,景気観測などに利用される。また,これらのデータは1年を周期とする変動=季節変動を含む場合が多いので,これを除外した季節調整データも同時に作成される。一方,年次および特定年次データは長期的な経済現象の変化を把握するのが目的で,構造分析や成長分析などに利用される。このほか,株価や為替相場のように日々の動きを示すデータや,週間または旬間形式の統計もある。統計の発表時期としては,月次および四半期データは速報性が要求されるので,早いものでは翌月,遅いものでも3ヵ月後である。これに対して,年次および特定年次データは調査票の回収から集計・加工までにかなりの時間を要するので1年後くらいが多い。とくに国勢調査の場合には,数十巻に及ぶ調査報告書の完成には数年かかるので,主要な部分は速報形式で発表される。
外国の経済事情を詳細に調べるためには,各国で作成されている個別の経済統計を利用する必要がある。先進国の統計はかなり整備されており,とりわけアメリカでは月次統計がきわめて豊富である。これに対して発展途上国では,統計の種類が少なく,それも年次データが中心である。また包括的な国際比較をする場合には,国際連合(UN)や経済協力開発機構(OECD)が各国の統計を同一の形式で表象・作成している統計書が便利である。日本でも,国際連合発行の統計年鑑が翻訳・出版されている(《国際連合統計年鑑》など)ほか,主要な外国経済統計を収録した年報などが作成されている。
執筆者:田原 昭四
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
各種の経済活動や経済現象を観測し、それらのある特性に関連して収集、整理、分析された数量的データを総称する場合と、経済的事象の理論や予測の基礎となるように、それに関する数量的データを収集、整理、分析し、さらに評価することについての知識の体系、つまり、経済統計学をさす場合とがある。
経済に関する数量的データの総称としての経済統計は、調査目的の違いから直接統計と間接統計とに区分される。直接統計は、行政や企業経営の資料として統計的結果を得ることを直接の目的として調査されるものである。これに属する日本の経済統計としては、政府および地方公共団体が直接作成する基幹統計が中心であり、国勢統計、経済構造統計、労働力統計、小売物価統計、就業構造基本統計、法人企業統計、賃金構造基本統計、農林業構造統計、漁業構造統計、農業経営統計、生産動態統計、建設工事統計、建築着工統計、自動車輸送統計などがある。これに対し間接統計は、統計を得ること自体を目的としてなされる調査に基づくものではなく、おもに日常業務のなかで生ずる情報に基づいて、定期的に業務の結果を調査、報告する目的で整理、分析されるものであるところから業務統計ともよばれる。日本の経済統計でこれに属するものとしては、貿易統計(通称、通関統計)、マネーストック統計、各種金利統計などの金融統計、国や地方の予算・決算統計、財政投融資関連統計などの財政統計をあげることができる。
これらの統計は、それぞれに固有の対象と独自の概念や定義に基づいて、経済活動の特定の側面を数量的に把握するものであるが、経済活動は相互に関連をもってなされるものであるから、これらの統計を基礎資料として系統的に整理、統合し、国民経済全体の姿を有機的に理解することも必要となる。そのような観点から作成されるものが国民経済計算であり、それに属する統計表あるいは分析表として、国民所得勘定、産業連関表、資金循環表、国民貸借対照表、国際収支表がある。
経済データに基づく理論形成や分析のための知識の体系としての経済統計においては、標本調査法などの統計的測定に関する理論、統計データの表示や集約に関する方法、それらを用いてみいだされる経済法則の統計的規則性の研究、統計的事実に基づく経済理論の検証と再構成、確率論的数量モデルに基づく予測などがおもな内容となる。この意味での経済統計については、その研究対象と方法において計量経済学と重複するところが多い。
[高島 忠・飯塚信夫 2020年12月11日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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