日本大百科全書(ニッポニカ) 「両浜組」の意味・わかりやすい解説
両浜組
りょうはまぐみ
近世初期から北海道で集団的に活動を続けていた近江(おうみ)商人の同業組合的な組織。琵琶(びわ)湖畔にある薩摩(さつま)、柳川(やながわ)両村の商人の組織だったので、両浜の名があるといわれる。のちに八幡(はちまん)村の商人も加わり、三か村の商人の組織となった。アイヌとの安定した交易を維持し、また漁民への融資を行いニシン漁を発展させるなど、松前(まつまえ)藩にとって重要な存在となっていた。したがって特権的な地位を保証され税制上の優遇などを受けており、一方、御用金の負担などでも重要な役割をもたされていた。このなかから大きな「場所」(アイヌ交易の地)を場所請負人として担当する大商人も出ている。18世紀後半になると、彼らの基盤とした松前、江差(えさし)周辺のニシン漁が低迷し、また蝦夷(えぞ)地の幕領化もあって勢力を失っていった。しかしその後も場所請負人のうちで重要な位置を占めた岡田家、西川家など両浜組商人の活動は目だつところを残していた。
[田端 宏]
『田端宏著『近江商人と場所請負制』(『北海道の歴史と風土』所収・1980・創土社)』