中小事業従事者労働災害共済事業法(読み)ちゅうしょうじぎょうしゃろうどうさいがいきょうさいじぎょうほう

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

中小事業従事者労働災害共済事業法
ちゅうしょうじぎょうしゃろうどうさいがいきょうさいじぎょうほう

個人事業者ら労働者災害補償保険(労災保険)に加入しにくい人向けに、民間共済サービスを恒久的に提供するための法律。正式名称は「中小事業主が行う事業に従事する者等の労働災害等に係る共済事業に関する法律」(令和3年法律第80号)で、中小事業主労災共済事業法ともよばれる。2021年(令和3)、超党派議員立法で成立し、公布日(2021年6月18日)から2年以内に施行。中小事業(労働者数300人以下または資本金3億円以下)の事業主、建設業や農林業の一人親方、俳優アニメーターなどのフリーランスを対象に、負傷疾病、障害、死亡といった人的損害を共済サービスで補償する制度を定めた。

 国の労災保険には、企業などに雇われた労働者以外に、一人親方ら事故にあいやすく「保護が必要」と判断された一部業種に限って加入できる特別加入制度があるが、業種や事業が限定されている。これを補うため、法的根拠のない民間の労災共済事業が存在してきたが、2005年(平成17)の保険業法改正で、民間の労災共済事業は「当分の間の暫定措置」である認定特定保険業に位置づけられ、事実上、二つの財団法人(一般財団法人あんしん財団と公益財団法人日本中小企業福祉事業財団)にしか個人事業主向け労災共済事業を認めず、新たな法人の参入を認めなかった。中小事業従事者労働災害共済事業法は個人事業主向けの共済事業を恒久制度と位置づけ、労災防止事業などを行っている財団法人や社団法人などの新規参入を認め、多くの個人事業主やフリーランスが労働災害にあった場合、共済事業による補償を提供できるようにした。法的根拠ができたことで、銀行も労災共済商品の窓口販売を行うことが可能になった。国は認可共済団体の健全性を維持するため、業務・財産状況の報告を求め、必要に応じて立入検査、業務停止、認可取消しができる。

[矢野 武 2022年1月21日]

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