設定者により一定の目的のために提供された財産(財団)を運営するためにつくられる法人で、法人格の基礎はこの財産に置かれている。法人格の基礎を団体(社団)に置く社団法人と対置される。一定の要件を満たすことにより設立できる一般財団法人と、公益法人(学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人。民法33条2項)として認定された公益財団法人がある。
財団法人の制度は、目的財産をその提供された目的に適合するように管理するための主体的組織として大陸法において発達した制度である。なお、英米法において発達した信託とその機能を同じくするところがある。
[淡路剛久]
2006年(平成18年)の民法改正(2008年12月1日施行)以前、財団法人はおもに公益を目的とするものとされ、民法の規定ももっぱら公益財団法人についてのものであった。改正前の民法では、公益法人を、祭祀、宗教、慈善、学術、技芸その他公益に関する社団または財団であって、営利を目的としないもので、主務官庁により法人となる許可を得たものと規定していた。しかし、このような公益法人制度は、法人の設立が容易でない反面、税制上の優遇策と結びついているために、公益性が主務官庁の裁量により拡大されて適用されることがあり、さらに、いったん設立されると、設立許可の取消し処分がなされることはめったにないために、休眠法人や公益事業を行っていない法人の存在、親族や特定の利害関係人によって運営される法人の存在、天下りの温床となっているなどの問題点が指摘されるようになった。そこで、2006年の民法改正に伴い、法人の設立と税制上の優遇措置とを切り離して、一般法人法を制定して法人の設立を容易にする一方で、公益法人認定法の制定により公益認定を厳格化するなどの改革が行われた。
[淡路剛久]
一般財団法人を設立するには、設立者が定款を作成し、これに署名または記名押印しなければならない(一般法人法152条1項)。改正前の民法の公益法人に関する規定では、財団法人の基本約款は寄付行為と名づけられていたが、一般法人法は、社団法人の場合と同じく、定款とよぶことにした。定款の必要的記載事項としては、目的、名称、主たる事務所の所在地、設立者の氏名等、設立に際して設立者が拠出をする財産およびその価額(300万円を下回ってはならない)、設立時評議員、設立時理事および設立時監事さらに設立時会計監査人(これを置かなければならない場合)の選任に関する事項、評議員の選任および解任の方法、公告方法、事業年度があげられている(同法153条)。一般財団法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立する(同法163条)。一般財団法人の機関としては、評議員、評議委員会、理事、理事会および監事が必置とされ、会計監査人は大規模一般財団法人を除いて、任意とされている(同法170条以下)。これらの機関と一般財団法人との関係は、委任の規定に従うこととなっている(同法172条1項)。一般財団法人の役員等については、一般社団法人に関する多くの規定が準用されている。
[淡路剛久]
公益法人認定法によれば、一般法人は、行政庁の認定を受けて公益法人となることができる(同法4条)。公益法人となれば、法人税について優遇措置がある。
公益認定の基準(同法5条)は、公益目的事業を行うことを主たる目的とするとか、公益目的事業の事業費および管理費用の合計額に対して占める比率が50%以上であるとか、公益事業を行うのに必要な経理的基礎および技術的能力を有するものであることなど、詳細に定められている。
なお、改正前の民法の法人法によって設立された公益法人については、特例措置が定められており、一般法人法の施行(2008年12月1日)後5年間は、一般法人として存続するものとされているが、その間に、公益認定を受けて公益法人となるか、または一般法人として認可を受けるかしなければ、解散したものとみなされる。
[淡路剛久]
一定目的のために提供された財産を管理・運営するために設立される法人。日本の法律では,積極的に公益を目的とするもののみに財団法人の設立を認めているので(民法34条),財団法人はすべて公益法人ということになる。財団法人が収益事業を営むことができるかどうかについては議論が分かれているが,利益の分配を行わず,その財団法人の目的を達成することに資するものである限り差しつかえないと一般に解されている。民法は,公益法人に関する通則を定めているが(33条以下),公益財団法人中,学校法人や宗教法人など,特別法によって規律されているものは多い。
財団法人の設立は,生存中はもちろん,遺言によっても行うことができる。設立にあたっては,まず,設立者が財団法人設立の意思をもって一定の財産を出捐(しゆつえん)し,同時にその財団法人の根本規則を定めなければならない(39条)。これを寄付行為という。財団法人の根本規則を定めた書面も寄付行為といわれるが(狭義の寄付行為),これには最小限,目的,名称,事務所,資産に関する規定,理事の任免に関する規定などが定められていなければならない(39条)。もっとも,これらのうち名称や事務所または理事の任免方法を設立者が定めないで死亡した場合は,利害関係人または検察官の請求によって裁判所が定めることになる(40条)。通常これを寄付行為の補完と呼ぶ。次に,主務官庁(当該法人の目的とする事業を主管する行政官庁)の設立許可を得なければならない(学校法人にあっては認可,宗教法人にあっては認証)。そして,設立登記をすることによって,財団法人は成立し,法律上の権利義務の主体となる。
財団法人の内部的事務は,理事がこれを処理し,同時に財団法人を代表して理事が対外的行為を行う。理事が複数あるときは,それぞれが財団法人を代表しうる建前になっているが,一般に理事長ないし代表理事を定めて対外的代表権を1人に集中している。財団法人には社員が存在しないから,社員総会はない。しかし,一般に理事の諮問機関としての評議員会が置かれている。なお,民法上,監事は不可欠の機関とはされていないが(58条),一般に財団法人の業務を監査するため監事が置かれている。特別法による財団法人では,通常これらを必要機関としている。例えば,私立学校法によって設立される学校法人である私立学校は,学校経営を目的として提供された資産を構成要素とする財団法人であり,その設立にあたっては,私立学校法30条1項5号で役員に関する規定を,6号で評議員会および評議員に関する規定を寄付行為に定めなければならないとしている。そして35条で,役員として理事5人以上および監事2人以上を置くこととし,理事のうち1人を理事長とすべき旨を定めている。以上のように,財団法人も実際の管理・運営に関しては社団法人に近い点が多い。
社団法人の場合,社団の構成員となるべき設立者の意思で目的や組織の根本が定められる点で自律的といえるのに対し,財団法人の場合は,法人の構成員でない設立者の寄付行為で目的や組織の根本が定められる点で他律的といえる。また,社団法人が,社員総会の決議によって組織だけでなく目的すら変更しうる点で弾力的であるのに対し,財団法人にあっては,寄付行為に変更手続が定められていない限りなんらの変更もなしえない点で固定的ということができる(ただし,一般に寄付行為には変更条項が置かれている)。
執筆者:鍛冶 良堅
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