立入検査(読み)タチイリケンサ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「立入検査」の意味・わかりやすい解説

立入検査
たちいりけんさ

行政目的を達成するため、担当公務員が事務所、営業所、工場、倉庫などに臨んで、業務の実施状況、帳簿書類、設備その他の物件などを検査すること。従来はこれを臨検とよぶことが多かった。行政法学上のいわゆる即時強制ないし行政調査の一種租税犯に関する調査のため税務官庁の職員が行う立入検査が主要例である。脱税事件の摘発行政手続ではあるが、犯罪捜査のためのものであるから、憲法第35条の令状主義趣旨により裁判官の許可状を要する(国税犯則取締法2条、関税法121条)が、単なる税務調査(所得税法234条)は令状を要しないかわりに、拒否された場合も単に処罰しうるのみで、意に反して立ち入ることはできない。さらに食糧法第52条、労働基準法第101条、食品衛生法第28条などにも立入検査、臨検の規定があるが、これらは単なる行政手続であるから令状主義の適用はない。立入検査ないし臨検の拒絶妨害には刑事制裁が科せられる。担当公務員は身分証明書を携帯し、要求があれば提示しなければならない。

[阿部泰隆]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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