小説家、劇作家。兵庫県尼崎市生まれ。本名中島裕之(ゆうし)。1975年(昭和50)大阪芸術大学放送学科卒業後、大阪の印刷会社に就職するが4年で退社。79年初めての小説『全ての聖夜の鎖』を自費出版する(のちに文芸春秋より刊行)。退職後はコピーライター養成講座に通い、82年広告代理店に入社。雑誌で軽妙なコピーの広告連載を始め、一躍人気を集める。これ以後エッセイやラジオ出演の依頼が殺到。84年には「中島らもの明るい悩み相談室」を『朝日新聞』大阪本社版の日曜版に連載開始、その後、全国版連載になる。86年中島らも事務所設立。同年劇団「笑殺軍団リリパット・アーミー」を結成する。同時期にアルコール性肝炎で50日間入院。このときの体験、病院で見聞した光景がのちに『今夜、すべてのバーで』(1991)に結実、同作は92年(平成4)吉川英治文学新人賞を受賞した。これ以前、すでに作者はコントやエッセイなどの著作で支持を集めていたが、小説家として注目を浴びるのはこの作品以降になる。
91年には人体をモチーフにした幻想小説の連作集『人体模型の夜』が直木賞候補になる。94年、民俗学、心理学、薬物学、オカルトなど広範な知識を駆使した伝奇小説『ガダラの豚』で日本推理作家協会賞を受賞。ケニアと東京を主舞台に、怪しげな僧侶やいんちき新興宗教の教祖、超能力青年、手品師、呪術師などが跋扈(ばっこ)する姿を描きながら、近代科学と呪術的社会の相克を浮き彫りにした力作で、直木賞の候補にもなった。さらに、詐欺師たちの暗躍を描いた『永遠(とわ)も半ばを過ぎて』(1994)も同じく直木賞の候補にあげられた。
94~95年、アルコール依存症と鬱病により最初は30日、次に70日ほど入院する。酒は高校・大学時代から飲んでいたというが、2000年発表の『バンド・オブ・ザ・ナイト』では80年代初期の日常を自伝風小説として描いている。それによると、周囲から「ヘルハウス」と呼ばれる作者とおぼしき人物の家には、ありとあらゆる問題を抱えた人々が、ときにはひと月に延べ100人以上も寝泊まりしていた。そんななかで、作者=「おれ」は、生活のために仕事をし、金を稼ぎ、やがて薬物と酒に溺れる日々を過ごすようになってゆく。94~95年の入院以後は一時は断酒を宣言するが、2003年2月麻薬及び向精神薬取締法違反、大麻取締法違反の両容疑で逮捕され、5月懲役10か月執行猶予3年の判決が下る。逮捕、拘置後に獄中体験を綴った『牢屋でやせるダイエット』(2003)を刊行した。
[関口苑生]
『『全ての聖夜の鎖』(2000・文芸春秋)』▽『『バンド・オブ・ザ・ナイト』(2000・講談社)』▽『『牢屋でやせるダイエット』(2003・青春出版社)』▽『『中島らもの明るい悩み相談室』(朝日文芸文庫)』▽『『今夜、すべてのバーで』(講談社文庫)』▽『『人体模型の夜』『ガダラの豚』(集英社文庫)』▽『『永遠も半ばを過ぎて』(文春文庫)』
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
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