日本大百科全書(ニッポニカ) 「中1ギャップ」の意味・わかりやすい解説
中1ギャップ
ちゅういちぎゃっぷ
中学校入学後に、学習や生活面での大きな環境変化に適応できず、不登校やいじめが増加する現象。ギャップ(大きなずれ)には二つあり、一つは、小学校では少なかった問題行動が、中学校に入ると急増するという、現象としてのギャップ、もう一つは、学校の制度や指導の方法が大きく変化するという環境のギャップである。中1ギャップの問題行動の多くは、中学生になって新しい友人・人間関係が築けなかったり、学習や部活動についていけなかったりすることをきっかけに、本人が自信を失い、不安や不満を募らせることが原因ではないかと考えられている。
社会生活におけるコミュニケーション・スキルの未熟さや、新しい環境への不適応などに起因して問題を起こすケースは、中学校だけではない。高等学校進学後にも同様の状態に陥る生徒が多く、「高1クライシス(危機)」とよばれる。また、小学校第1学年においては、入学時の不安定な状態が長引き、集団行動がとれず、授業中に着席していられない、教師の話を聞かない、といった問題行動がみられることがあり、これは「小1プロブレム」といわれる。このような問題は、上級の学校へ進む際の急激な環境の変化による精神的・肉体的な負荷をできるだけ小さくすることで解消される場合が多い。そのため、小・中一貫教育による学校再編をはじめ、小学校と中学校の連携を強化し、入学前の交流活動や、子供について継続的に記録し、それを引き継ぐための小中連携シートなどの資料づくりが行われている。また、入学後の児童生徒の心理状態を把握するため、内省ノートやアンケート調査によるストレスチェックを行いながら、自立を促すようなクラスの活動を行うといった取り組みが進められている。東京都において、近隣の小・中学校の間で教職員同士が情報交換会を開いている学校は、2012年(平成24)で9割ほどに上る。さらに、中学校教師による小学校への授業参観、小・中学校教員の合同研修など、交流事業を行っている学校が7割前後に上っている。
[編集部]