コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

不登校 ふとうこう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

不登校
ふとうこう

登校しない,あるいは登校したくてもできない状況。なんらかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,頭痛,腹痛,倦怠感などの身体的症状を含む拒否状態が生じる。病気や経済的理由によるものは除く。従来,不登校は学校ぎらい,登校拒否などと表現されていた。文部科学省は 1998年の学校基本調査から,年間 30日以上欠席した児童生徒の理由の分類のうち「学校ぎらい」を「不登校」に名称変更した。不登校の児童生徒数は年々増加し,2001年度の国公私立の小中学校の不登校者数は 13万8722人と過去最高を更新した。同年発表された学校基本調査によれば,不登校となった直接のきっかけは小学校では「本人の問題に起因」,中学校では「学校生活に起因」が最も多かった。不登校状態が継続している理由は小学校,中学校とも「不安など情緒的混乱」が最も多かった。文部科学省は支援と防止に取り組み,スクールカウンセラー配置の拡充や「心の教室相談員」の配置など,教育相談体制を整備した。一方で,不登校は疲労症候群や難治性睡眠障害などの身体的疾患であるとして,医学的な研究・治療も進められている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵の解説

不登校

広義には、学籍のある子ども(児童生徒)が、登校すべき日に登校しない日が多い状態。行政統計上は、病気や経済的理由など以外で長期に欠席をした者で、文部科学省が毎年5月1日現在で調べている学校基本調査においては、1990年度までは、年間50日以上欠席していた者を長期欠席者として計上しており、理由としては「学校嫌い」という用語が用いられて、それを登校拒否と呼んでいた。91年度からは、長期欠席扱いをする年間欠席日数が30日以上に変更になり、また、学校に行きたくても行かれない児童生徒も増えていることから、理由として「不登校」という言葉が使われるようになった。 教育学では、古くから、親の同意のない故意の欠席といった意味を表す怠学(truancy)という用語があるが、今日日本で問題になっている不登校は、理由の面からより広い概念である。不登校が長期化して、「ひきこもり」状態になる者が多いということもいわれており、その関連性が問題になっている。2005年度の不登校児童生徒の比率は、小学校0.32%、中学校1.13%で、統計上は減少傾向にある。

(新井郁男 上越教育大学名誉教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

不登校

文部科学省によると、病気や経済的理由以外で年30日以上学校を欠席したケースをいう。2014年度は小中学校12万3千人(全体の1・2%)、高校5万3千人(同1・6%)。小中学校は2年連続で増え、5年ぶりに12万人を超えた。文科省は教育委員会が学校以外の場所で不登校生を援助する「適応指導教室」の設置を広げる方針を示している。

(2015-12-08 朝日新聞 夕刊 1社会)

出典 朝日新聞掲載「キーワード」朝日新聞掲載「キーワード」について 情報

デジタル大辞泉の解説

ふ‐とうこう〔‐トウカウ〕【不登校】

学校に不安・恐怖を感じる何らかの心理的理由や、本人を取り巻く家庭・学校・地域社会の状況などさまざまな要因が重なって、児童・生徒が登校できないでいる状態。ずる休みとは違うものと認識される。登校拒否。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

大辞林 第三版の解説

ふとうこう【不登校】

児童・生徒が学校に行かない状態。何らかの理由で積極的に登校しないことを選択する場合もあるが、心理的抵抗感から登校しない場合が多い。登校拒否。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

不登校
ふとうこう

児童生徒の心身の状態や彼らをとりまく家庭、学校、地域社会の状況など、さまざまな原因によって児童生徒が登校しない、あるいは、登校したくてもできない事態をさす。
 このような事態には、当初「学校恐怖症」school-phobiaや「登校拒否」refuse to go to schoolということばが使われていた。
 これらは児童生徒の問題行動のうちでも、その性格上、非行や暴力など他者へ害を及ぼすような反社会的行動と区別され、ひきこもりや緘黙(かんもく)などのように、本人自身の現在あるいは将来にとって支障になると思われるような非社会的行動の一つととらえられ、登校する意思を秘めながら登校時になると原因不明の頭痛や腹痛、強い心配や不安などの神経症状に襲われて登校を拒む状態が生じるようになる場合が多い。
 日本では、1960年代に多く出現し、単なる怠学やずる休みとは異なる状態であるという認識がなされ始め、1970年ごろからは「登校拒否」とよばれるようになった。しかし、今日では登校しないという事態は、かならずしも本人の心身の状態にのみ起因するのでなく、その背後に家庭、学校、地域社会を含むさまざまな要因が考えられ、また、登校しないという事実そのものへの認識が強調され、「登校拒否」にかわって「不登校」という呼称が多く用いられるようになった。
 不登校は、客観的に妥当な理由が明確にみいだされないまま、年間30日以上欠席した児童生徒のうち、病気や経済的理由を除き、「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にあること」(学校不適応対策調査研究協力者会議による定義)であるとされ、発達過程での一次的な現象から精神障害の症状まで含めてとらえられており、より幅広い概念として理解されている。
 文部省(現、文部科学省)でも、学校嫌いを理由に年間30日以上欠席した児童生徒を「登校拒否」とよんでいたが、1999年度(平成11)からこれを「不登校」と改称している。[増田 實]

原因と様態

「不登校」の正確な数をみいだすことは困難であるが、2011年度(平成23)、心理的要因などで登校しない、またはできない長期欠席者は、小学校で2万2622人、中学校で9万4836人とされている(文部科学省調査)。
 その原因は一様ではないが、学校の方針や指導などに対する本人の納得の度合いが少ない、という点では共通する部分が多い。また、家庭が子供たちの成長の土台として不十分であることもおもな要因の一つにあげられる。しかし、どの子供にも、どの家庭にも、不登校を生じさせる可能性は存在すると考えられる。
 「不登校」の様態には、(1)学校生活に起因する型、(2)遊び・非行型、(3)無気力型、(4)不安などの情緒的混乱型、(5)意図的な拒否型、(6)複合型((1)~(5)が複合していて特定不能)、(7)その他(以上のいずれにも該当しない)があるといわれている。小学校における「不登校」では(4)の型、すなわち、登校の意思はあるが心身の不安・不調が強いなどの場合が多く、また、中学校では(3)の型、すなわち、学習への意欲に欠けている、何となく気力が出ない、などに起因する場合が多い。[増田 實]

援助・支援策

同じ「不登校」であっても、その状態は個人によってさまざまであるので、それに応じたきめ細やかな援助・支援の方策を講じる必要がある。
 予防的側面として、(1)どの子供にも起こり得るという認識をもつこと、(2)不登校の前兆行動などの知識を得ておくこと、(3)子供との日常的な接触を密にすること、などが考えられる。また、治療的側面として、(1)カウンセリング的態度をもとに、その事態にふさわしい技法や援助法を選択すること、(2)家庭と学校の連携・協力態勢(ネットワーク)を確立し、対応中心者を明確に定めておくこと、(3)専門的諸機関(相談所、病院など)との連携を図ること、などがあげられる。
 「不登校」対策には、とくに専門的な第三者のかかわりが効果的である、と考えられる。この点で「スクールカウンセラー」(1995年度より文部省の活用調査研究委託事業として開始、2001年度からは恒常的制度に移行)は、不登校児童生徒への援助者・支援者となることが期待されている。また、単に学校に復帰することを考えるのではなく、不登校児童生徒が自らの力で問題状況を克服して自立に向かう、という視点も重視されるよう求められる。そのため、地域社会や学校外の諸施設との連携をよりいっそう深め、フリー・スクールなどの民間施設がこの対策の一つになる、と考えられている。文部科学省は、一定の要件を満たす場合、これらの民間施設で相談・指導などを受けた日数を指導要録上の出席扱いにし、小・中学校の卒業認定に幅をもたせる方策を講じている。
 「不登校」経験者のその後に関して、文部科学省ではその追跡調査を行っており、2013年(平成25)7月の報告によると、2006年度に中学校3年で不登校だった全国の1604人(2013年時点では22歳前後)に対して中学校卒業後の進路などをたずねているが、その直後に進学した者は81%、就職した者が6%、進学も就職もしなかった者が8%であり、その後に進学した者を含めた高等学校への進学率は87%であった。このうち61%が望みどおりの高校があった、と答えている。2011年度時点での彼らの通学状況は、大学19%、短期大学4%、専修学校・各種学校15%、通信制高等学校6%となっている。1993年度(平成5)に中学校を卒業した不登校生徒を対象とした調査よりも進学率は上昇しており、とくに高等学校への進学率は65%から20%以上も増加している(文部科学省「平成五年度不登校生徒追跡調査報告書」)。
 これらをみると、不登校は、発達上の一時的現象であり、その時点での判断を超えて時間的に長いスパンでとらえる見方が求められる、といえよう。[増田 實]
『詫摩武俊・稲村博編『登校拒否』(1980・有斐閣) ▽内山喜久雄編『登校拒否』(1983・金剛出版) ▽坂野雄二編『登校拒否・不登校』(1990・同朋舎出版) ▽高垣忠一郎著『登校拒否・不登校をめぐって――発達の危機、その「治療」と「教育」』(1991・青木書店) ▽吉田脩二・生徒の心を考える教師の会編著『不登校――その心理と学校の病理』(1993・高文研) ▽稲村博著『不登校の研究』(1994・新曜社) ▽高垣忠一郎・藤本文朗・横湯園子編『登校拒否・不登校1 小学生』 ▽高垣忠一郎・藤本文朗・横湯園子編『登校拒否・不登校2 中学生』 ▽高垣忠一郎・藤本文朗・横湯園子編『登校拒否・不登校3 高校生』(ともに1995・労働旬報社) ▽畑島喜久生著『「いじめ」「不登校」という教育のひずみ』(1997・高文堂出版社) ▽佐伯胖・黒崎勲他編『岩波講座 現代の教育4 いじめと不登校』(1998・岩波書店) ▽河合隼雄編『不登校』(1999・金剛出版) ▽総務庁行政監察局編『いじめ・不登校問題などの現状と課題』(1999・大蔵省印刷局) ▽牟田武生著『ひきこもり/不登校の処方箋――心のカギを開くヒント』(2001・オクムラ書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

不登校の関連キーワードschool counselorフリースクール・フリースペース不登校対策コーディネーター公立小中学校の不登校問題「菌」発言と第三者委員会なごや子ども応援委員会いじめ防止対策推進法きみはサヨナラ族か人間関係プログラムいじめ調査の経緯十五才 学校IV不登校児童生徒数install青少年センター教育機会確保法フリースクール引きこもり現象株式会社立学校起立性調節障害フリースペース

今日のキーワード

だまし面接

企業が面談や懇談会と称して就職活動中の学生を呼び出し、実質的には学生を選考する偽装面接のこと。2016年卒業の大学生に対する選考活動の開始時期を、従来の4月1日から8月1日以降へと後ろ倒しする主旨の「...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

不登校の関連情報