事始(読み)ことはじめ

精選版 日本国語大辞典 「事始」の意味・読み・例文・類語

こと‐はじめ【事始】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物事のはじめ。新しく事をはじめること。とりかかること。着手すること。建築の開始、着任最初の仕事など、無事成功を願って儀式化したものもある。
    1. [初出の実例]「事はじめとこそ言ふなれ、いづら、そのこなむ」(出典:本居本宇津保(970‐999頃)蔵開上)
  3. 新年になって、何事によらず一年の幸いを祈りつつ最初に行なうこと。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「それ青陽の春になれば、四季の節会の事始め」(出典:寛永卯月本謡曲・鶴亀(1544頃))
  4. 江戸時代、上方などで一二月一三日、江戸では一二月八日に、すす払いをして正月の準備をはじめること。おことはじめ。→事八日(ことようか)。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「正月事始、米舂」(出典:舜旧記‐慶長元年(1596)一二月一三日)
  5. 農家で、その年の農事をはじめた日。陰暦二月八日。おこと。→事八日(ことようか)。《 季語・春 》

事始の補助注記

( について ) 江戸では一二月八日と二月八日を、ともに「事の日」「お事」と称したが、いずれを「事始め」とするかは混乱していたようである。「江都年中行事」「俳諧歳時記‐下」は一二月八日とし、「江戸鹿子」「用捨箱‐上」は二月八日としている。「事」を正月の祭事と考えた場合は、一二月八日が事始め、二月八日が事納め、「事」を農事と考えた場合は、二月八日が事始め、一二月八日が事納めとなる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の事始の言及

【建築儀礼】より

…古代寺院の造営でも,基礎工事では鎮壇具を地中に埋めて安全を祈り,完成のときには造立供養(ぞうりゆうくよう)が行われた。平安時代以降の建築工事では,礎(いしずえ)(礎石を据えるとき),手斧始(ちようなはじめ)(事始(ことはじめ),木作始(きづくりはじめ)とも呼び,材木加工の開始),立柱(りつちゆう)・柱立(はしらだて)(柱を立てるとき),上棟(じようとう)・棟上(むねあげ)(棟木をのせるとき)が主要な儀式で,日時をあらかじめ陰陽師が卜占し,当日は建築工匠と工事関係者が工事場に集まって儀式を行った。手斧始では工匠が材木に墨糸で墨を打って手斧で削る所作を行い,上棟では棟木上に五色の絹や御幣を飾り,酒を供えた。…

※「事始」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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