改訂新版 世界大百科事典 「事実上の政府」の意味・わかりやすい解説
事実上の政府 (じじつじょうのせいふ)
de facto government
合法的に成立した政府が法律上の政府と呼ばれるのに対し,革命,クーデタなどで非合法的に成立した政府は,事実上の政府と呼ばれる。それは,権力が国家領域一般に及ぶ一般的事実上の政府と,地方の一部にしか及ばない地方的事実上の政府とに区分されるが,前者は政府承認,後者は交戦団体承認の対象となる。一般的事実上の政府は,外国から政府承認されない限り,自国を正式に代表して外国と交渉したり,自国の名で国際法上の権利を主張したりできない。しかし,新政府を承認しない外国がその国家の領域に侵入するならば,それは領域侵犯であり,国際法上違法である。地方的事実上の政府は,交戦団体として承認されると,一定範囲内で国際法主体となる。ちなみに,日本が1943年に承認した〈ビルマ国政府〉は,イギリス本国との関係では地方的事実上の政府であったとみる東京地裁判決(1965年7月14日)がある。
→承認 →内乱
執筆者:松田 幹夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報