日本大百科全書(ニッポニカ) 「二重保障条約」の意味・わかりやすい解説
二重保障条約
にじゅうほしょうじょうやく
Rückversicherungsvertrag ドイツ語
1887年6月ビスマルク外交の一環としてドイツとロシアとの間に結ばれた秘密条約。再保障条約ともいう。ドイツ、オーストリア、ロシアを結び、フランスを孤立させてきた三帝同盟が崩壊したあと、ビスマルクはロシアのフランスへの接近を妨げるためこの条約を結んだ。期限は3年で、締結国の一方が第三国と戦争する場合、他方が好意的中立を守ることを約束。ただしこれはどちらか一方がオーストリアないしフランスに戦争をしかけた場合には適用されない。ドイツはこの条約により、ロシアのフランスへの接近を防止し、またフランスがドイツを攻撃した場合もロシアの中立を確保できることになり、また対立するロシアとオーストリアをともにドイツに結び付け、ロシアとフランスの双方に対する保障を得ることができた。しかし90年ビスマルクが失脚したあと、この条約は更新されなかった。
[木谷 勤]