法律行為の効力の発生・消滅または債務の履行を、将来到達することが確定している事実の発生にかからせる付款(法律行為から生ずる効果を制限するため、表意者が法律行為の一部としてとくに付加する制限)をいう。たとえば、来年の2月10日に代金を払うという場合における、2月10日がそれである。期限は、将来かならず到来するという点で、それが不確定であるところの「条件」とは異なる。
期限のうち、法律行為の効力の発生または債務の履行に関するものを始期といい、法律行為の効力の消滅に関するものを終期という。また、到来する時期の確定しているものを確定期限といい、到来する時期の不確定なもの(たとえば、自分が死んだときなど)を不確定期限という。期限をつけることは一般に自由であるが、婚姻・縁組みなどの親族法上の法律行為には、その性質上、期限をつけることが許されない場合が多い。期限は、その内容たる事実の発生したときに到来する。すなわち、債務の履行につけられた始期が到来すれば、債権者は履行を請求することができ(民法135条1項)、法律行為の効力の発生につけられた始期が到来すれば、その効力が発生し、終期が到来すれば、効力が消滅する(同条2項)。期限が存在することによって当事者が受ける利益を「期限の利益」という。だれが期限の利益を有するかは場合によって異なるが、民法は、一般には債権者がこれを有するものと推定した(同法136条1項)。そして、期限の利益はこれを放棄することができる(同条2項)。たとえば、弁済期到来前に債務の弁済をするなどである。しかし、相手方を害することはできない(同項但書。たとえば、利息を生ぜしめる債務の場合には弁済期までの利息をつけなければ放棄できない、など)。また、債権者側に一定の事由(たとえば、破産宣告を受ける、など)が生じた場合には、債務者は期限の利益を失う(同法137条)。
[淡路剛久]
〈来年4月1日から〉社員として採用する(例1),〈来春雪が融ければ〉上京して返済する(例2)というように,法律行為の効力の発生・消滅または債務の履行を,将来到来することが確実な事実の発生にかからせる付款(条件)を,期限という。上例1の場合を確定期限といい,2の場合を不確定期限という。〈出世(成功)したときに返済する〉という約束付きの出世払債務では,付款が条件であるか不確定期限であるかを区別しがたいことがある。
期限は,〈今月末日に〉代金を支払う(例3)というように,債務の履行に関するものや,〈1995年末まで〉年金を与える(例4)というように,法律行為の効力の消滅に関するものが多い。前記の1や3の場合を〈始期〉,4の場合を〈終期〉という。婚姻・養子縁組などの身分行為には期限をつけることはできない。手形の場合には条件は許されないが期限は許される(先日付手形)。
始期付権利は,権利ではあるが,期限到来までは請求できない。このことは,債務者にとって履行が猶予されていることを意味する。これを〈期限の利益〉という。債務者は,債権者を害しないかぎり期限の利益を放棄できるとともに,一定の事由(破産宣告など)が生じた場合にはこれを喪失する(民法137条)。割賦払債務などにおいては,〈1回でも弁済を怠ったとき〉または〈他から強制執行を受けたとき〉には,期限の利益を喪失するという特約がなされる(期限の利益喪失約款)。その際,その事実が生ずれば当然即時に債務全額について期限が到来するのか,債権者の全額請求があってはじめて期限が到来するのかが,時効期間の起算点に関連して問題となる。
→期間
執筆者:岡本 坦
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