五人男物(読み)ごにんおとこもの

改訂新版 世界大百科事典 「五人男物」の意味・わかりやすい解説

五人男物 (ごにんおとこもの)

人形浄瑠璃歌舞伎狂言の一系統雁金かりがね)五人男,雲霧(くもきり)五人男,白浪五人男などをいう。雁金文七を頭とした庵(あんの)平兵衛,布袋市右衛門,極印千右衛門,神鳴庄九郎という実在した5人の無頼漢(1702年8月刑死)を,獄門翌月に岡本文弥座で人形浄瑠璃化した《雁金文七秋の霜》以来《雁金文七一年忌》(山本飛驒掾,1703),《雁金文七三年忌》(宇治加賀掾,1704)と語りつがれたが,《男作五雁金(おとこだていつつかりがね)》(竹田出雲作,1742年7月大坂竹本座)によって,仁俠の徒としての性格が強調され,後世に大きな影響をもたらした。歌舞伎でも1702年(元禄15)に大坂松本名左衛門座で上演,以後17年(享保2)江戸の中村座で《街道一棟上曾我》として演じられ,26年大坂の金子吉左衛門座(中の芝居)で《男作五人組》が,また《名月五人男》(1730年中村座)では五人男が勢ぞろいしてつらねを述べる個所が評判となった。ほかに《梅若菜二葉曾我》(藤本斗文作,1756年3月江戸市村座),《紋尽(もんづくし)五人男》(4世鶴屋南北作,1825年4月中村座),《恋衣雁金染》(河竹黙阿弥作,1852年1月江戸河原崎座)などがある。また雲霧仁左衛門を首領とする〈雲霧五人男〉の系統では《竜三升高根雲霧(りようとみますたかねのくもきり)》(黙阿弥作,1861年5月江戸守田座)があり,ほかに〈白浪五人男〉として日本駄右衛門以下の盗賊を描いた《青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)》(黙阿弥作,1862年3月市村座)がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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