紋尽(読み)もんづくし

精選版 日本国語大辞典 「紋尽」の意味・読み・例文・類語

もん‐づくし【紋尽】

〘名〙
① 絵や図柄としていろいろな紋柄を描いたもの。また、紋所を列挙すること。
※俳諧・西鶴五百韻(1679)何餠「松平家の雲の行末〈西六〉 是でしるる時雨ぞそむる紋尽し西吟〉」
遊女の紋を描いて遊里の案内とした書。また、遊女や歌舞伎俳優などの紋を掲載した評判記の類の書。
浮世草子好色一代男(1682)七「新板の紋尽(モンツク)し、紅葉三浦太夫と、読そめるより色にそまり」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紋尽」の意味・わかりやすい解説

紋尽
もんづくし

紋を装飾模様として用いることは、すでに鎌倉時代から始まる。しかし、それは主として鶴(つる)の丸、鳳凰(ほうおう)の丸、巴(ともえ)など、吉祥的な性格をもった紋を地文風に敷き詰めるか、器物衣装要所に配したもので、変化に富んだ各種の紋を自由に散らした紋尽、紋散らし出現は江戸初期(17世紀初頭)を待たねばならない。こうした紋尽には、実際使われている家紋以外に、華麗な草花、鳥獣、あるいはしゃれた器物を丸紋風に仕立てたものが含まれており、形式や色彩に変化をつけている。やがて江戸中期以後、丸紋はしだいに絵様化し、紋章形式の本来的な抽象性が希薄になり、したがって紋尽のおもしろさも損なわれていった。

村元雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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