日本大百科全書(ニッポニカ) 「仙痛」の意味・わかりやすい解説
仙痛
せんつう
胃、腸、胆道、腎盂(じんう)、尿管など腹部臓器の壁を形成する平滑筋が伸展、けいれんなどをおこすことにより発作性、反復性にみられる腹痛をいう。仙痛を意味するコリックcolicは結腸のcolonから派生した語である。古くは疝気(せんき)とよばれていたものであり、さし込み、癪(しゃく)などとも俗称された。
疼痛(とうつう)発作は数分間続き、これが一定の間隔で周期的に反復することが多い。発作が終わると痛みはなくなる。疼痛は激しく、絞るようなとか、刺すようなとか、引っ張るようなとか、灼熱(しゃくねつ)感などと表現される。ほぼ罹患(りかん)臓器の位置に一致して痛みを自覚するが、一定方向への放散痛(関連痛)を伴うことが多く、特徴的なものもある。おもなものに胆道仙痛、腸仙痛、腎・尿路仙痛、膵(すい)仙痛、子宮仙痛などがある。
胆道仙痛は代表的なもので、胆石症によるものがもっとも多い。腸仙痛は腸管、とくに小腸の通過障害を伴ったときにみられ、比較的に長く痛みが持続し、へそに向かって放散するのが特徴であり、代表的なものは腸閉塞(へいそく)である。腎・尿路仙痛は腎盂および尿管結石にみられ、しばしば尿路に沿って下腹部、膀胱(ぼうこう)、外陰部へ痛みが放散する。膵仙痛は膵石が膵管を通過するときにみられ、胆道仙痛に似た激痛を伴う。子宮仙痛は子宮壁のけいれん性疼痛で、月経性仙痛や種々の子宮疾患にみられる。治療としては鎮痙(ちんけい)剤や鎮痛剤を投与するほか、ショックに対する処置、絶食を含む食事療法を行い、原因の除去を図る。
[細田四郎]