改訂新版 世界大百科事典 「伸展反射」の意味・わかりやすい解説
伸展反射 (しんてんはんしゃ)
stretch reflex
extension reflex
骨格筋に引っぱりの力が加わったときに起こる反射で,伸張反射ともいう。重力に抗して関節を伸ばさせて,直立姿勢を保つときに働く伸筋でとくによくみられる。正常な神経支配を受けている骨格筋ではこのような現象が起こるが,筋肉を支配する神経を切り筋肉と中枢神経系の連絡を断つと収縮は起こらないことから,筋伸展の情報が中枢神経系を介してその筋肉を反射的に収縮させることがわかる。筋伸展の受容器は筋紡錘で,伸展反射の経路の大部分は一次求心性ニューロン(信号を伝える神経繊維)と運動ニューロンが一つのシナプスを介してつながった単シナプス経路である。筋肉の伸展に伴い,その筋肉の中にある筋紡錘が伸展されると,筋紡錘に始まる一次求心性繊維(Ia群繊維)が興奮して電気的インパルスを発する。このインパルスは原則として,その筋紡錘を含む筋肉を支配する運動ニューロンに一つのシナプスを介して伝わり,伸展された筋肉を収縮させる。このように,反射刺激の受容器が運動を行う筋肉のなかにあるような反射を固有反射という。Ia群繊維のインパルスは,拮抗筋(伸展された筋肉と,関節の動きに関して,逆の働きをする筋肉)を支配する運動ニューロンを,抑制性ニューロンを介して,抑制する。臨床的には筋肉を伸展させる際に腱をたたくので腱反射ともいわれる。伸展反射は,膝蓋腱反射やアキレス腱反射(アキレス腱をたたくと,腓腹筋やひらめ筋に収縮が起こる反射)のように,正常動物でもみられるが,上位中枢からの影響を受けていて一般に起こりにくい。上位中枢が障害され,抑制性の影響が弱まると,伸展反射は亢進し,持続的に,また反復して起こる。
→反射
執筆者:大野 忠雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報