日本大百科全書(ニッポニカ) 「アキレス腱」の意味・わかりやすい解説
アキレス腱
あきれすけん
下腿(かたい)後面のふくらはぎの下方からかかとの骨(踵骨(しょうこつ))に向かって走る、皮下に触れる索状の腱。解剖学名を踵骨腱という。ふくらはぎの筋である下腿三頭筋(腓腹筋(ひふくきん)とヒラメ筋で構成)と踵骨とを結ぶ腱で、体のなかではもっとも強大な腱である。下腿三頭筋の急激な収縮によってアキレス腱に不自然な方向の伸張力がかかると、裂傷を生じることがあり(アキレス腱断裂)、ギプス固定あるいは縫合手術で治療する。なお、アキレス腱の名は、ホメロスの叙事詩『イリアス』に出てくる不死身の英雄アキレウスが、唯一の弱点であるこの腱に傷を受けて倒れたとの伝説からつけられたという。
[嶋井和世]
アキレス腱反射
下腿軸と足とを直角の位置にしてアキレス腱をたたくと、足は足底(足の裏)側に反射的に伸展する。この現象をアキレス腱反射といい神経障害の検査に用いられる。この反射が正常でないと脊髄(せきずい)の仙髄部分やこの高さの脊髄神経の故障を疑う。
[嶋井和世]
アキレス腱断裂
アキレス腱の皮下断裂はスポーツ外傷として跳躍、疾走などの際におこる。腓腹筋(ひふくきん)が緊張状態にあるときに、足関節が急に強く背屈を強いられると断裂する。その瞬間に激痛を感じ、音を発することもある。つまさき立ちができなくなる。不完全断裂と完全断裂があり、ギプス固定あるいは手術が必要である。完治すればスポーツがふたたびできるようになる。
[永井 隆]