仮果(かか)ともいう。心皮(しんぴ)以外の萼(がく)や花床(かしょう)(花托(かたく))などの部分を含む果実の総称であって、真果(しんか)(真正果実)に対していう。
バラ科ではいろいろの偽果がみられ、リンゴ属、ナシ属などでは真果の周りを発達した花床が取り囲む。イチゴ属では花床が発達して液質となり、その表面に小さい真果が埋め込まれた形となっている。イチジク属では壺(つぼ)状の花床が発達し、果実はその中に隠れている。
ケンポナシやカシューノキ属では花柄(かへい)(花梗(かこう))の上部が膨れて果実状となり、その上に子房の発達した果実が付属物のようについている。ヤブランやルイヨウボタンでは子房壁が発達せず種子が大きくなるため、子房壁は破れ、種子の基部に小さく縮んで付着し、種子が果実状になるが、これは真果である。またキク科植物の痩果(そうか)といわれるものは、萼筒(がくとう)が宿存し、中に果実が入っているので、正確には真果ではなく偽果である。パイナップルは複合果であるが、子房壁ではなく、花序の軸がとくに発達したもので偽果である。
[吉田 治]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…花柱が残って子房とともに大きくなり散布に役立つものが,テッセン,チングルマなどに知られている。 このように実の構成に子房以外の部分が関係しているものを偽果false fruitと呼び,子房からのみなる狭義の実を真果true fruitとして区別することがある。しかし両者の区別は必ずしも明瞭ではなく,例えばカキでは萼が著しく生長するので偽果となり,ミカンの萼はほとんど生長しないため真果とするのでは,あまりにも人為的過ぎる。…
※「偽果」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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