改訂新版 世界大百科事典 「ヤブラン」の意味・わかりやすい解説
ヤブラン
big blue lily-turf
Liriope muscari Bailey
暖帯の照葉樹林下に普通にみられるユリ科の多年草。葉に縞斑(しまふ)や虎斑(とらふ)の入るもの,新葉時だけ白い葉などの園芸品種も育成されている。本州,四国,九州に野生し,朝鮮半島南部と中国大陸に分布する。葉はすべて根出葉となり,線形で長さ30~60cm。花茎は高さ30~50cmで上部は総状花序となる。花期は8月。花は3~8個ずつ集まってつき,斜上向きに咲く。花被は6枚あり,紫色,長さ約4mm。おしべは6本あり,花糸はくの字形に曲がっている。子房は上位で3室。各室に2個ずつ計6個の胚珠があり,そのうち1個が子房を破って黒色球形の種子となる。近縁種ヒメヤブランL.minor (Maxim.) Makinoは花茎の高さ7~15cm程度のより小型の植物で,花はまばらにつく。日本全土に分布し,芝地に多い。コヤブランL.spicata Lour.(英名creeping lily-turf)は両者の中間的な外見を持つ種で,西南日本の暖帯から中国大陸,台湾,インドシナに広く分布する。漢方ではジャノヒゲ(麦門冬)とともに薬用とし,催乳剤,止咳剤などとして利用する。
ヤブラン属Liriope(英名lily-turf)はジャノヒゲ属に近縁で,子房が上位である点が異なる。8種からなる小さな属で東アジアに分布する。属名はギリシア神話の泉のニンフ,リリオペLiriōpēにちなむ。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報