日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケンポナシ」の意味・わかりやすい解説
ケンポナシ
けんぽなし
[学] Hovenia dulcis Thunb.
クロウメモドキ科(APG分類:クロウメモドキ科)の落葉高木。樹皮は黒みがかった灰色で浅く縦に裂け、枝は紫褐色で皮目がある。葉は広卵形で長さ8~15センチメートル、淡緑色、3本の葉脈が目だつ。花は淡緑色で、6~7月、枝の先の集散花序に多数つく。果実は核果、無毛で紫黒色に熟す。秋に果実の柄が肥大し、甘く食用となる。肥大した果柄が人の手のようで味が梨(なし)に似るところから、手棒(てんぼう)梨が訛(なま)ってこの名になったらしい。果実を生食あるいは煎(せん)じて飲むと二日酔いを覚ますといわれている。材は木目が美しく狂いが少ないので装飾材に用いる。山野に生え、北海道の奥尻(おくしり)島から九州、朝鮮半島、中国に分布する。本州、四国には果実に毛のある別種ケケンポナシH. trichocarpa Chun et Tsiang(H. tomentella Nakai ex Y.Kimura)がある。ケンポナシ属は東アジア特産で、3種ある。
[門田裕一 2019年12月13日]