改訂新版 世界大百科事典 「ケンポナシ」の意味・わかりやすい解説
ケンポナシ
Japanese raisin-tree
Hovenia dulcis Thunb.
丸い大きな葉をもつクロウメモドキ科の落葉高木。晩秋に花序の先端部がふくれて肉質になり,果実とともに落ちる。これは甘くて食べられる。ケンポナシはテンポナシ(手棒梨)がなまったもので,ふくれた花序の柄に由来するという。すらりと背の高い落葉高木。葉は互生し,広卵形で大きく,長さ15cm,幅10cm前後,脈は基部で三分し,縁には鋸歯がある。花期は6月頃で,新枝の葉腋(ようえき)に集散花序をつくる。淡緑色の花は5数性で,5個の萼裂片の間に5枚の花弁がある。おしべは花弁の内側に抱かれるようにつく。花柱は3裂し,子房は花盤に埋まり,3室がある。果実はほぼ球形で,革質の果皮に包まれ,中に光沢のある平たい3種子がある。北海道(奥尻島),本州,四国,九州,朝鮮,中国に分布する。本州,四国ではケケンポナシH.tomentella Nakaiが普通にみられ,果実に毛があり,葉もやや厚い。ケンポナシは果柄が子どもや野生動物の食用となり,時には売られることもある。また果柄や果実には利尿作用があり,漢方薬や民間薬として利用される。
執筆者:岡本 素治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報