備陽記(読み)びようき

日本歴史地名大系 「備陽記」の解説

備陽記
びようき

三五巻一六冊 石丸定良編輯

成立 享保六年自序

写本 池田家文庫

解説 備前一国すなわち岡山藩領の初めての本格的な地誌であり、史料的価値の最も高いものとして評価される。以後の地誌にも大きな影響を与えた。定良は延宝七年知行二〇〇石で江戸留守番役として出仕、貞享四年以降邑久・磐梨・備中山北・同山南、浅口上道・御野・児島の各郡奉行を歴任、さらに正徳三年組頭、享保一〇年以降勘定頭を勤め、同一三年知行四〇〇石、同二〇年喜寿の年に隠居を命じられ剃髪して令帰と改める。寛延元年九〇歳で没。本書序文に「備前国之事跡委ク記ス者我未見之、(中略)予若年ヨリ此事ニ志シ随所見聞是ヲ書集メシカバ漸ク小冊之書ト成レリ」とある。これに先立って定良の作成した「備前記」は、一定の項目に基づく村単位の明細書である。長期間の郡奉行時代に鋭意収集された基礎史料はひとまずこの「備前記」として集成され、次にこれを事項別に分類編成し諸史料を補充するなどして新たに編集したものが「備陽記」と考えられる。ただし享保六年までに二五巻が成り、二六巻以下の一〇巻はその後加えられたようである。定良は本書の完成後、勘定頭として致仕に至るまで連年大坂での借銀調達に奔走しており、後補一〇巻の成立時期は不明。

構成 巻一(備前歴代の守護・城主、岡山城下の沿革、領内の戸口・石高・郡村数・田畑畝数等)、巻二―四(神社)、巻五―六(寺院と沿革)、巻七(名所・古歌等)、巻八(古城跡)、巻九(湊・島・名物・古屋敷等)、巻一〇―一九(村別の石高・田畑畝数・戸口等)、巻二〇(古寺跡・古墓・古戦場等)、巻二一(諸家の旧記・感状・書状等)、巻二二(長寿者等)、巻二三(児島郡浦辺絵図)、巻二四(往還絵図)、巻二五(善人記)、巻二六―三五(万覚、光政公・綱政公御軍用備定、利隆公大坂御陣御家中旗指物、東照宮聞伝記等) 上下巻・付図一冊

活字本 昭和四〇年刊、底本は岡山市立図書館蔵八丹幸八筆写本。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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