国指定史跡ガイド 「元興寺小塔院跡」の解説
がんごうじしょうとういんあと【元興寺小塔院跡】
奈良県奈良市西新屋町にある寺院跡。小塔院は、称徳天皇が藤原仲麻呂の乱による戦没者の冥福を祈るために造り、南都十大寺に置いた百万塔の小塔を安置するために造営された院とされる。『続日本後紀』の834年(承和1)の記事によると、元興寺の東塔院と対称の位置にあたる伽藍(がらん)の西南にあって、南に礼堂をもった小塔堂を中心に、他に檜皮葺き建物3棟や門が付属していたという。現在は、市内西新屋町にあたるが、この小塔院は元興寺金堂の西南に位置しており、元興寺の西辺、平城京条坊を考えるうえで重要視され、1965年(昭和40)に国の史跡に指定された。高さ5.5mほどの当時の木造五重小塔が、元興寺所蔵で現存し、奈良時代の五重塔の建築様式を伝えるものとして、国宝の建造物に指定されている。鎌倉時代、元興寺別当には興福寺や東大寺の僧がいなかったことから、元興寺の寺運は次第に衰え、とくに1451年(宝徳3)10月の土一揆による火災が小塔院から発生し、別院として独立していた極楽坊を除いて元興寺は衰微していった。近畿日本鉄道奈良線近鉄奈良駅から徒歩約10分。