元来,創建・宗派・寺地などを共にする寺院相互において,故あって一方の大寺を本寺・本山としてそれに属する寺をいう。後世の末寺の一種である。9世紀より天台・真言2宗の興隆流布とともに別院が派生した。例えば京都雲居(うんご)寺は地勢上あたかも八坂寺(法観寺)の別院のごとくで,民衆は八坂東院と呼んでいたことが《続日本後紀》《三代実録》にみえる。加賀国高雄山寺や伊勢国多度神宮寺(法雲寺)は真言宗別院となり,播磨国大道寺や清妙寺,陸奥国弘道寺,近江国延祥寺などが天台宗別院となり,滋野貞主(しげののさだぬし)創建の滋恩院が西寺の別院,奈良禅院寺が元興(がんごう)寺別院,伊豆大興寺が海印寺別院,新薬師寺は東大寺別院,多武峰(とうのみね)妙楽寺は無動寺別院となった。以後,別院の称は,興福寺末の永久寺,正暦寺などのように末寺の中でも由緒深い寺をとくに称したようで,中世以降になると,本山の由緒地の仏堂や出張所までも別院と呼ぶにいたった。ことに真宗では各地に別院を設けているが,それには本山・本寺の称号を用い,特別の寺号がなく住職もいないのが普通である。
執筆者:堀池 春峰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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