日本大百科全書(ニッポニカ) 「光トポグラフィー」の意味・わかりやすい解説
光トポグラフィー
ひかりとぽぐらふぃー
身体に無害な近赤外光を使って、脳の活動状況を調べる医療機器。脳の表面にある運動野や言語野などの血流の変化パターンを地形図(トポグラフィー)のように表示する。近赤外線分光装置ともよばれる。うつ病、統合失調症などの精神疾患の診断に使われる。医療だけでなく、言語機能や教育など脳科学研究の進展にも役だつと期待される。
近赤外光は骨や筋肉などを透過しやすいうえ、血液中のヘモグロビンがもつ酸素量によって吸収量が異なり、脳の血流状況を調べることができる。精神疾患は病気ごとに脳の血流の変化パターンが異なることが知られており、光トポグラフィーを活用すれば、医師の問診頼りで診察がむずかしいとされる精神疾患においても誤診を避け、適切な治療方針を立てやすくなるとされる。
日立製作所が「光トポグラフィ法」を開発し、グループ企業の日立メディコが装置を商品化している。日立製作所は「光トポグラフィ」の登録商標を保有しているが、学術用語として広く普及しているため、2005年(平成17)、広く一般に公開した。光トポグラフィー装置は1台数千万円と高価なうえ、健康保険が適用されず、普及の妨げとなっていたが、厚生労働省は2009年、うつ症状診断の補助手段として光トポグラフィー診断を「先進医療」として承認。専門医などがいる大学病院などでは保険診療と組み合わせて検査をする混合診療が可能になった。
[編集部]