改訂新版 世界大百科事典 「免疫拡散法」の意味・わかりやすい解説
免疫拡散法 (めんえきかくさんほう)
immunodiffusion technique
血清学的検査法の一つで,抗原性をもつ物質の解析には欠くことができない。二重拡散法double diffusion testともいう。抗原と抗体とを寒天,アガロースなどのゲル内で向かい合って拡散させながら,ゆっくり反応させて目に見える沈降線をつくらせる方法で,多種類の抗原と抗体があるときは,その種類に応ずるだけの沈降線が観察できる。沈降線ができる原理は,一般の沈降反応と同じで,ゲル内を拡散する抗原,抗体両物質の濃度比が最適の場所で沈降物が形成されることによる。広く用いられるのはオークテルロニー法Ouchterlony's methodである。これは,寒天平板に複数の孔をあけ,抗原液と抗体を含む血清(抗血清)とを向かい合わせて拡散させると,孔の間に沈降線が生じ,抗原抗体反応系の数に応じた沈降線が観察できる。また,正三角形のA,B,C3点に孔をあけ,Aには抗血清(抗b,抗c抗体を含む)を,Bには抗原bを,Cには抗原cを入れて沈降線をつくらせたとき,AB間にできた沈降線とAC間にできた沈降線が完全に融合したときはbとcは同一物質である。両沈降線が交差したときは,bとcとは異なる物質である。AB間の沈降線にAC間の沈降線が入りこんだときは,cはbの化学構造の一部を共有している場合である。このような解析は,免疫グロブリンの初期のペプチド構造の解明に大いに役立った。
→抗原抗体反応
執筆者:松橋 直
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