児童心理司(読み)じどうしんりし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「児童心理司」の意味・わかりやすい解説

児童心理司
じどうしんりし

児童福祉法第12条に基づいて、児童相談所に配置されている心理分野の専門職員。法律上は特定名称はなく、「判定をつかさどる所員」とされている。療育手帳交付にあたっての心理判定業務をはじめ、子供とその家族の相談に応じ、診断面接、心理検査観察により対象者の状況を評価し、これに対応した心理療法カウンセリング、助言指導などを行う。また、児童福祉司や精神科医と連携しながら、一時保護されている子供に対して心理療法を実施するほか、心理面の支援方針の策定にも取り組む。

 もともと、心理判定員の名称で身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、福祉事務所、障害者支援施設などにも配置されていた専門職で、厚生労働省の児童相談所運営指針の改正により、2005年度(平成17)から児童心理司の呼称になった。今日では大学や大学院で心理学を専攻した者がつく専門職として一般的に位置づけられているが、認定資格者である児童福祉司に対して、児童心理司は配置基準が明確に定められていない。児童相談所では、虐待などの問題で公的介入と支援を実施する際に、児童福祉司と児童心理司がチームを編成して取り組むことが重要となっていることから、児童心理司の拡充が急がれている。

 2014年4月時点で、全国の児童相談所に配置されている児童福祉司2829人に対し、児童心理司の配置人数はその44.5%の1261人である。また、1999年度(平成11)と2013年度の児童虐待の相談対応件数を比較すると、件数は約6.3倍に増加したが、児童福祉司の配置人数は約2.3倍の増加にとどまっている。児童福祉司、児童心理司のあり方を見直して、児童相談所が子供に関する通告や悩みに確実に対応できるよう、体制を整備することが必要である。

[編集部 2016年10月19日]

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