心理検査(読み)しんりけんさ(その他表記)psychological assessment
psychological test

改訂新版 世界大百科事典 「心理検査」の意味・わかりやすい解説

心理検査 (しんりけんさ)
psychological assessment
psychological test

一般に人間の知的な能力,環境の認知のあり方,動機づけの型,人格統合の一般的な特性,役割行動自己概念,価値,不安や抑うつ水準などをつきとめる専門的な道具をいう。クロンバックL.J.Cronbachは〈心理検査とは,ある人の行動を観察し,それを一定の数量尺度またはカテゴリー・システムによって記述するための系統的手順である〉と定義し,最大量の動作をみるものと典型的動作をみるものに二大別している。歴史的にはキャッテルJ.M.Cattellがメンタル・テストという言葉を用いた(1890)のに始まるといってよいであろうが,今日では検査(テスト)と呼ぶよりはアセスメントと表現され,個人や集団を理解するために特定技法を系統的に用い,相談や治療,教育の方向づけを的確に進めることに貢献している。検査という時それは一つの道具をさすのだが,心理検査においては,それを用いて解釈する検査者の能力に大きく依存しており,対象の理解や問題の解明,精神力動の把握は,単なる面接によるよりも正確で詳細な情報が得られるものと期待されている。大きく分類すると知能テスト人格検査に分けられ,いずれにも個人法と集団法とがある。

 1904年スピアマンが一般知能の考え方を提案し,05年にビネA.BinetとシモンT.Simonが史上最初の知能テストをパリで発表し,同年ユングが言語連想テストを公表した。日本では21年に鈴木治太郎がビネ法による個人知能テストを公表し,渡辺徹,本田観二,栗林宇一により東京全市の学童を対象に22年国民知能検査が実施された。知能テストの普及は教育の普及や壮丁選別,福祉的には児童相談所の開設に伴っている。人格検査は人格研究の方法として発展したものであるが,今日みるような検査方法は力動的な人格論が台頭したことによるもので,日本では第2次大戦後,主としてアメリカよりの投影法の実験的・臨床的な知識の導入により教育,臨床,産業の分野において普及した。投影法の代表としてロールシャハ・テスト,TATがあげられ,前者被験者の年齢,文化をこえて国際的に用いることが可能であるが,技法の習得,教育訓練に時間がかかるので,時代や経済状況によって消長がある。また投影法によらないものでは,コンピューター技術の導入により施行が簡便なので質問紙法が隆盛になったが,使用目的や対象者の質による制限がある。なお,臨床場面において最近では治療対象を患者のみならず家族(父母,同胞,夫婦)へと拡大し,これらを含めた同席治療が考えられ家族診断テストが工夫されている。この傾向は,たとえば家族共同画などに見られるように,治療法決定のための検査としてばかりではなく,検査場面における集団の成員間のコミュニケーションパターンや行動の査定,さらには検査場面での発言や行動を洞察へと導く治療過程の一つとして組み入れる方向へと進んでいる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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