デジタル大辞泉 「全身性硬化症」の意味・読み・例文・類語 ぜんしんせい‐こうかしょう〔‐カウクワシヤウ〕【全身性硬化症】 膠原病こうげんびょうの一種。皮膚の硬化、関節炎や内臓病変などの症状を特徴とする。中年以降の女性に多い。「全身性強皮症」として指定難病に登録。強皮症。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
内科学 第10版 「全身性硬化症」の解説 全身性硬化症(膠原病・血管炎の腎障害) (5)全身性硬化症(systemic sclerosis:SSc) 全身性硬化症は強皮症の一種である.強皮症には全身性硬化症と限局性強皮症があるが,腎障害を生じるのはほとんど全身性硬化症である.本症は全身の皮膚硬化を特徴とするが,肺線維症,腎症,消化管病変など内臓病変を伴う全身疾患である.なかでも腎障害は強皮症腎クリーゼとして知られる.本症は悪性高血圧の症状を呈するのが特徴であるが,近年高血圧を呈さない,正常圧腎クリーゼとよばれる病型が存在することが知られるようになった. a.高血圧性強皮症腎クリーゼ 欧米の成書では全身性硬化症の約10%の症例に発症すると記載されているが,わが国でははるかに少ない.本症は全身性硬化症患者に突然発症する急速進行性の腎不全である.拡張期圧130 mmHg以上の悪性高血圧,蛋白尿,血尿,BUN,血清クレアチニン値の急激な上昇,微小血管障害性溶血性貧血を生じ,急速に末期腎不全に至る.腎組織では輸入細動脈にフィブリノイド壊死像が認められ,悪性腎硬化症と同様の所見を呈する(図11-6-8).この腎クリーゼはひとたび生じると止めようがなかったが,アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)を投与することによって,腎不全の進行が著明に抑制されるようになった.アンジオテンシン受容体拮抗薬やカルシウム拮抗薬の有効性も報告されているが,ACEIと同等であるのかについてはいまだエビデンスがない.診断基準はいくつかあるが,Steenによるものを表11-6-5に示す.全身性硬化症の症例では腎クリーゼを発症しない患者でも,腎生検を行うと,小葉間動脈レベルの血管に内膜のムコイド様増殖とよばれる肥厚像がみられることが多い. b.正常血圧強皮症腎クリーゼ ⅰ)血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)様腎クリーゼ 微小血管障害性溶血性貧血,血小板減少を伴う腎障害である.高血圧を伴わないのが前項の腎クリーゼと異なる.中枢神経症状は普通伴わないので血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)より溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)に近いが,TTPと同様のADAMTS13の活性低下が報告されている【⇨14-11-5)】.腎組織上,細小血管内皮細胞障害,糸球体メサンギウム融解をみる.治療はHUSと同じく血漿交換あるいは血漿輸注が有効である. ⅱ)ANCA関連腎炎 MPO-ANCA陽性でpauci-immune型の壊死性半月体形成性腎炎を呈し,顕微鏡的多発血管炎との合併例の形をとる.肺出血もみられる.前項と同じく高血圧を伴わず,正常圧腎クリーゼの1つである.高齢で強皮症の罹患歴が長く,限局性強皮症が多いという.治療としてはANCA関連疾患に準じステロイド,免疫抑制薬投与を行う.[山田 明] 表11-6-5 出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報