全長寺(読み)ぜんちようじ

日本歴史地名大系 「全長寺」の解説

全長寺
ぜんちようじ

[現在地名]川本町川本

矢谷やたに川の下流右岸、市井原いちいばらにある。鶴峯山と号し、曹洞宗本尊観音菩薩。もと全提ぜんてい庵と称したが、江戸初期に全長寺と改称したと思われる。同庵開山玄鱗は毛利氏の温湯ぬくゆ城攻略に加担し、その戦功を賞され寺地を与えられて創建したとされる(石見誌)。ほかに天正四年(一五七六)創立との説もある(新石見寺社案内)。永禄年間(一五五八―七〇)と推定される五月一二日の吉川元春書状(全長寺文書)に「全提庵」とみえ、同庵ほかに温湯城在番を堅固に勤めるように命じている。


全長寺
ぜんちようじ

[現在地名]北郷村宇納間

中原なかばるにある。鉄城山と号し、曹洞宗。本尊は聖観音開基は延岡藩城代家老花田備後守。開山は延岡台雲だいうん寺各同良異。当寺の縁起によると、宇納間うなま郷内には当寺と天台宗宝蔵ほうぞう寺・真福しんぷく寺、浄土真宗光輪こうりん寺があったが、天正六年(一五七八)大友宗麟の日向進攻に際して兵火に遭い焼失した。元禄元年(一六八八)花田備後守が全長寺・宝蔵寺・真福寺を合併して全長寺と号し、曹洞宗とした。明治四年(一八七一)に光輪寺も当寺に合寺した。本尊は忿怒相の半跏像で、天正六年に兵火にかかったが山頂に飛翔して難を逃れたと伝えられ、広く信仰されている。秘仏のため六〇年に一度だけ開帳される。地蔵堂には延命地蔵が安置され、宇納間地蔵・火切の地蔵と一般にいわれている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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