日本大百科全書(ニッポニカ) 「共通だが差異ある責任」の意味・わかりやすい解説
共通だが差異ある責任
きょうつうだがさいあるせきにん
common but differentiated responsibilities
地球温暖化問題の解決は人類共通の責任ではあるが、産業革命以来大量の化石燃料を消費してきた先進国と、これから経済発展する途上国にはその責任の重さに違いがあるという、地球温暖化問題で使われる概念。略称CBDR。「共通だが差異ある責任の原則」(principle of "common but differentiated responsibilities")とよばれることもある。1992年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開かれた「地球サミット」(環境と開発に関する国際連合会議)で先進国と途上国との間でこの原則が合意に至り、同サミットのリオ・デ・ジャネイロ宣言に初めて盛り込まれたほか、国際連合の気候変動枠組み条約の前文やおもな条文にも明記されている。同概念は、先進国には途上国よりも重い責任があり、先進国が途上国に先行して地球温暖化ガスの削減を行うほか、先進国は途上国に対し温暖化対策に関する必要な資金や技術を提供する義務があるとされている。
もともとは、主張が対立する先進国と途上国を同じ国際交渉のテーブルにつけるために考え出された面がある。ただし、中国やインドなどの大量に温暖化ガスを排出する途上国政府はこの概念を「地球温暖化問題は主として先進国の責任であり、これから経済発展する途上国は温暖化ガスの削減に応じる必要はない」と、都合よく解釈して、温暖化ガスの排出削減に応じない根拠とすることもある。こうした途上国の姿勢により、アメリカ政府が温暖化ガス削減について取り決めた京都議定書から離脱しており、温暖化ガス削減の国際ルールが骨抜きになる懸念も生じている。
[編集部]