兼用船(読み)けんようせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「兼用船」の意味・わかりやすい解説

兼用船
けんようせん

2種類以上の貨物を積めるようにした船。鉱石原油の2種類、あるいは鉱石と原油と穀類などのばら積貨物の3種類を積載できる兼用船が多い。それぞれ鉱石兼油槽(ゆそう)船、鉱石・ばら積兼油槽船とよばれる。これは、同時に2種類以上の貨物を運ぶのではなく、運賃市況や航路の立地条件によって有利になる貨物を選んで運ぶ。鉱石は比重が大きくて容積を広く必要としないから、長さ方向を3列にした貨物倉の中央だけに積載し、原油を運ぶときには3列全部を使うようにしたものが鉱石兼油槽船である。この長さ方向の仕切り(縦隔壁(かくへき))を取り払って、ばら積貨物をも積載できるのが鉱石・ばら積兼油槽船である。最近はより多種類の貨物を積むための設備をもつ船も現れ、多目的貨物船とよばれる。兼用船は貨物の出回り状況や運賃市況に対応できる利点はあるが、異種の貨物のための設備や構造が複雑になり、かえって使いにくい面もある。

[森田知治]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「兼用船」の意味・わかりやすい解説

兼用船
けんようせん
combined carrier

船体構造上,鉱石と石油を積載できる構造設備をもつものがあり,また鉱石と穀物運送をすることのできる船舶がある。前者を鉱石・タンカー兼用船 ore and oil carrierといい,後者を鉱石・穀物兼用船 ore and grain carrierという。前者の場合,船体中央に鉱石倉 (兼油タンク) があり,その両側船底に油タンクが備付けてある。後者では,中央の鉱石倉の両側が穀物用船倉となっている。また,鉱石とそれ以外のばら荷と油とを積載することのできる OBO船 ore-bulk-oil carrierと呼ばれるものもある。海運の場合は一般産業と異なり,船舶技術が進歩するにつれて,船舶の多様な個性化が進み,船舶の多様な専用船化の過程で,さらにこれらの各種専用船を兼用できる専用船 (兼用船) が出現する。それぞれ専門の作業能力をもった作業船の分野でも,たとえば投石船兼用の土運船や防災船兼用の引船がある。

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世界大百科事典(旧版)内の兼用船の言及

【貨物船】より

…とくにインダストリアルキャリアの場合,船はその一生を通じて特定の港湾にしか出入港しないため,その限定された条件の中で最大限の効率を追求した設計が行われている。原油,鉄鉱石,穀類などの大量輸送を要する貨物は,その輸送にもっとも適した専用船で運ぶのが経済的であるが,輸送需要の変動に対応するため,鉱石兼油送船,ばら積み・鉱石兼油送船,鉱炭船(鉱石と石炭)など,限定した数種類の貨物を輸送する兼用船も建造されている。 なお,コンテナー船の場合,コンテナーの中身にまで立ち入ればあらゆる貨物を運んでいるが,コンテナー単位でみると専用船といえる。…

※「兼用船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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