日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
内田クレペリン精神作業検査
うちだくれぺりんせいしんさぎょうけんさ
単にクレペリン検査とか、内田クレペリン検査とも称されているが、精神作業検査の代表的な検査という意味を含めるとき、このような検査名がふさわしい。1桁(けた)の数字を用い、連続加算作業を行わせ、その作業経過(作業量や作業曲線の型など)から精神的活動の特性を知ろうとする方法である。この方法の理論は、ドイツの精神医学者クレペリンおよびそれに続く人々の研究に始まる。検査は、隣り合った1桁の数字を次々に加算し、二つの数字の和の10位の数は省略し、1位の数を(和が1位の場合にはそのまま)二つの数字の間の下に記入していくものである。クレペリンは休みなく連続加算させる方法で精神障害の研究に用いたが、内田勇三郎(1894―1966)は1分ごとに行を変えさせ、練習2分ののち、休憩前15分、休憩5分、休憩後10分(のちに15分に改める)という方法を確立し、対象も一般に広げられるようになった。1分ごとの作業量による作業曲線に反映する因子のうちもっとも重要なものには、意志緊張、興奮、慣熟、練習効果、疲労などがある。結果の判定では、作業量は作業能力を示すが、作業曲線は作業ぶりを示すものとして、1万人以上の平均作業曲線を基礎とする健康者常態定型曲線とのずれや誤謬(ごびゅう)数により、主として作業適応度を判定する。性格を行動に反映するものとして、加算作業によるこの検査結果も性格の診断に利用できるとする考え方もある。性格・適性の検査として現在も多く用いられているが、あまり多くを望むことなく、限界を心得ての利用が望ましい。
[浅井邦二]
『『内田クレペリン精神検査基礎テキスト』(1973・日本精神技術研究所)』▽『戸川行男監修『精神作業検査要覧』(1973・実務教育出版)』▽『日本・精神技術研究所編・刊『内田クレペリン精神検査データブック』(1990・金子書房発売)』▽『中塚善次郎著『内田クレペリン検査の新評価法』(1991・風間書房)』▽『リクルーティング・セミナー編『内田クレペリン検査完全理解マニュアル』(2006・土屋書店)』