興奮(読み)こうふん(英語表記)excitation

翻訳|excitation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

興奮
こうふん
excitation

(1) 生体の組織がなんらかの原因 (刺激という) により静止状態から活動状態へ移行すること。 (2) 生体の反応性を説明するための構成概念で,反応の強さと比例するとされる。 (3) 条件反射学で,陽性条件刺激によって大脳皮質の対応部位に生じるとされる過程で,反射の生起に対して促進的に作用し,陰性条件刺激によって生じる制止過程と拮抗する過程。 (4) 精神医学で,日常的または病的原因により気分ないしその表出としての動作が高進した状態。

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デジタル大辞泉の解説

こう‐ふん〔コウ‐|カウ‐〕【興奮/×昂奮/×亢奮】

[名](スル)
感情が高ぶること。「―を静める」「―して口数が多くなる」「―状態」
生体またはその器官・組織が、内外の刺激に反応して、休止状態から急速に活動状態になること。特に、神経細胞筋線維活動電位を生じること。
気分が病的に高揚した状態。カフェインアルコール急性中毒躁病(そうびょう)の患者などに認められる。

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百科事典マイペディアの解説

興奮【こうふん】

元来は精神活動の高揚を表す言葉であるが,生物学では,生体またはその組織や器官刺激を受けて反応し,静止状態から活動状態に移ることをいう。刺激によって細胞膜のイオン透過性が変化して興奮個所が電気的に負になり,非興奮部が正となって,活動電位が発生する(活動電流)。この興奮はしばしば隣接部に伝播していくため,神経や筋肉は興奮性組織と呼ばれる。興奮の持続時間は1000分の数秒程度で,伝導の速度は神経繊維では直径に比例し,定温動物運動神経(直径20μm)は秒速100mほど。 なお精神医学では,急性アルコール中毒進行麻痺(まひ)の初期,躁(そう)病の際にみられる心的状態を指す。ふつう多弁,大げさな身振り,思考の飛躍とともに,強い焦燥感や逆に多幸感を伴う。

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世界大百科事典 第2版の解説

こうふん【興奮 excitation】

通常は精神活動の高まりを表現する言葉であるが,生物学では細胞やその集まりである組織が突如その活動を活発にすることを興奮と呼んでいる。外からの刺激に応じて興奮を起こすのが普通であるが,内部的な原因により自発的に起こる場合もある。興奮はいろいろな物理的,化学的な刺激により引き起こされ,動き,収縮あるいは分泌などが活発になる。神経繊維や筋繊維ではとくに,微弱な電流刺激によってその細胞膜に一連の電気的な変化を生じ,しかも1ヵ所に生じた電気的変化により隣接部が刺激されてつぎつぎと興奮を起こし,これによって興奮が繊維を伝っていくという特異な性質がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

興奮
こうふん

生理学では、生物の細胞または個体にある刺激が加えられたとき、それに反応して休止状態とは明らかに異なる活動状態に移行することを興奮という。刺激とは一般に外部環境条件の変化であるが、反応は、通常、細胞または個体の働きが盛んになることとして現れる。しかし、逆に刺激の結果、反応が低下することもあり、この場合は、麻痺(まひ)または抑制という。また、細胞によっては、たとえば心筋細胞のように、なんらの刺激がなくても興奮をおこすものがある。これを自動興奮という。しかし、自動興奮も細胞内の代謝に基づく内部条件の変化が刺激になっていると考えられるので、刺激の定義を拡張して、細胞内外の条件の変化であるととらえれば、興奮とは、「刺激によって引き起こされる活動的反応である」といえる。そのほか、精神科でも興奮という語が使われるが、これは気分が病的に高揚した状態のことで、そう病やアルコール中毒などにみられるものである。ここでは生理学でいう細胞の興奮について述べることとする。
 動物のある種の細胞、たとえば神経細胞(神経線維)や筋細胞(筋線維)は微小な刺激に対して容易に興奮する。しかし、興奮のない静止状態において、これら細胞の表面を覆う細胞膜を調べてみると、細胞膜の表面は電気的にプラス、細胞内がマイナスに分極していて、細胞膜の裏表の間には一定の電位差がある(これを膜電位という)。筋線維の膜電位は約90ミリボルト程度であり、静止電位とよばれる。刺激の作用とは、いいかえれば、この静止電位を減少させる方向に働く作用といえるわけである。静止電位の減少を脱分極といい、脱分極がある一定の値まで進行すると、静止電位は、突然、自動的に減少を始め、静止電位はまったく消失するだけでなく、さらに進行して、細胞内が逆にプラスになっていく。これを膜の極性逆転、またはオーバーシュートという。しかし、この極性逆転はただちに元に戻り、膜電位はふたたび静止電位に回復していく。これを再分極という。このような、脱分極→極性逆転→再分極の全経過を活動電位という。神経線維や筋線維においてはこれらの経過が非常に速く、数ミリ秒で終了するため、とくにスパイク電位といわれる。また、神経線維の活動電位は、神経衝撃またはインパルスとよばれることもある。このような活動電位の発生があれば、その細胞が興奮したといえるわけである。
 こうした興奮の仕組みを説明するものとして「イオン説」というのがある。もともと細胞外液にはNa(ナトリウム)イオンが多く、K(カリウム)イオンが少ないが、細胞内は、逆にNaイオンが少なく、Kイオンが多い。一方、細胞膜はNaイオンに対しては透過性が低く、Kイオンに対しては透過性が高いため、静止電位は、主として細胞内外のKイオン濃度の比によって規定されることになる。興奮時には、まず細胞膜のNaイオン透過性が増大するので、Naイオンが細胞内に流入して脱分極、および極性逆転をおこす。ついでNaイオン透過性が急速に減少するとともにKイオン透過性が増大するので、再分極がおこり、膜電位は静止電位に戻る。これが「イオン説」の概略である。興奮が続くと、しだいに細胞内にNaイオンがたまってくるが、細胞膜にはNaポンプ作用があり、静止時にNaイオンをくみ出しているため、Naイオンの排出と入れ替わりにKイオンが細胞内に取り込まれる。興奮部では前述したような極性逆転がおこるため、周囲の非興奮部からみると電気的にはマイナスになっている。このため、非興奮部から興奮部に向かって電流が流れることとなる。これを局所電流という。この局所電流は非興奮部の膜を脱分極させるために、次には隣接する非興奮部が結局は興奮するに至るわけである。このようにして興奮は細胞膜全体に伝播(でんぱ)していくことになる。これを「興奮の伝導」という。神経線維や筋線維のような線維では、興奮の伝導速度はその直径に比例する。体温下にある直径20マイクロメートルの神経の伝導速度は毎秒約120メートルである。[真島英信]

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精選版 日本国語大辞典の解説

こう‐ふん【興奮・昂カウ奮・亢カウ奮】

〘名〙
① 刺激を受けて感情がたかぶること。また、その感情のたかぶり。
恋慕ながし(1898)〈小栗風葉〉二七「誠にカンフル百筒(とう)の注射よりも劇(はげし)く純之助を興奮(コウフン)せしめたので」
② 生体またはその器官、組織が刺激によって、機能を上昇させること、または休止状態から活動状態へ移ること。神経や筋肉などによくみられる。

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世界大百科事典内の興奮の言及

【意欲障害】より

…分裂病,鬱病,ヒステリーにみられる。〈興奮excitement〉 病的な気分をともなって激しい運動が増加する状態であり,不安,爽快気分に基づくが,動機不明の場合もある。〈緊張病症状群catatonic syndrome〉 分裂病の緊張型に出現する症状。…

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