改訂新版 世界大百科事典 「内談方」の意味・わかりやすい解説
内談方 (ないだんかた)
室町幕府において1344-1349年(興国5・康永3-正平4・貞和5)の間に活動した所領押領,年貢抑留,用水相論,遵行難渋,下知違背など従来引付方所管の訴訟を扱った機関。内談とは室町幕府における沙汰の原案作成のための合議(内評定)をいい,政所,侍所,問注所,引付方,禅律方,仁政方などそれぞれ内談を行っているが,単に内談,内談衆,内談の座という場合には引付方(あるいは上記期間は内談方)のそれをいう。幕府成立の当初より設置された五番編成の引付方が上記案件について処理してきたが,1344年高師直,上杉朝定,同重能をそれぞれ頭人とし,一方ごとに10人の寄人で構成される三方制の内談方が新設された。以後49年8月足利尊氏の弟直義の股肱(ここう)の臣といわれる重能が失脚して,五方引付が従来の活動を再開するまで,引付方に代わって活動した。内談方の審議には直義の臨席を原則としたことが推測され,内談方設置は尊氏と直義の権限分掌という状況下での直義の親裁権確立の動きの一つと見られている。この間従来の引付方は廃止されたと思われるが,もし存続したとしても,どのような機能を果たしたか詳しいことは解明されていない。また,49年以後活動する機関が内談方の改組されたものではなく,引付方の復活であることは,内談方の一つの特徴である直義(あるいは直義没落後にはそれに代わる貴人)臨席の原則をもっていないこと,《花営三代記》に〈引付門真権少外記〉(応安6年3月18日),〈五方引付〉(永和1年11月26日)などとあり,1471-90年(文明3-延徳2)の間に編集された《武政軌範》に〈引付〉〈引付内談〉などとあること,などにより明らかである。
執筆者:村尾 元忠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報