室町幕府に置かれた禅宗・律宗寺院(個人としての禅僧・律僧も含む)関係の訴訟等を取り扱った機関。室町幕府は禅律方を設けて禅律寺院を保護・統制したと推測される。禅律方の長官を頭人と呼称するが,この禅律方頭人の存在が確認できるのは,1337年(延元2・建武4)の細川和氏から79年(天授5・康暦1)の某まで(一時期中止される)である。頭人・奉行等で構成される禅律方の職掌は,訴訟当事者の一方が禅律寺院(僧)である所務訴訟(所領関係の訴訟)等の裁許を行うこと(判決は頭人の奉書で発給される),またこれら寺院の規式の作成等であった。禅律沙汰日(裁判を行う日)を月に6度(のち3度となる)設けたことは,禅律寺院関係の裁判を円滑ならしめるための優遇措置と思われ,一方寺院の規式作成等を通して統制もはかった。同時期室町幕府に存在した一般の所務訴訟機関引付方と同様に,康暦期(1379-81)以降は禅律方頭人の機能も管領のもとに吸収された。管領が禅律方頭人の機能を果たしたのは鹿苑僧録が成立する(1400年ころ)までとされる。
執筆者:田辺 久子
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