円行(読み)えんぎょう

朝日日本歴史人物事典 「円行」の解説

円行

没年仁寿2.3.6(852.3.29)
生年延暦18(799)
平安前期の真言宗の僧。入唐八家のひとり。京都出身。16歳のとき元興寺で出家して華厳宗を修め,のち空海から伝法灌頂を受け密教者となる。承和5(838)年入唐。空海が学んだ長安の青竜寺を訪れ,その死を告げる実恵の音信を手渡した。同寺座主の義真から伝法阿闍梨の灌頂を受け,翌年帰国。山城国(京都府)の霊厳寺や播州の大山寺を開き,天王寺最初の別当に就いたという。当時の人々の意識では,密教は,いわゆる宗教の枠組みにとどまるものではなく,むしろ今日の先端的な科学技術に匹敵する面を持っていた。そのため円行が帰国の際,請来した数々の曼荼羅や密教法具・儀軌は先端科学機器やマニュアルの輸入に通じ,円行自身も密教エンジニアの性格が濃い。<参考文献>守山聖真『文化史上より見たる弘法大師伝』

(正木晃)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「円行」の解説

円行(1) えんぎょう

799-852 平安時代前期の僧。
延暦(えんりゃく)18年生まれ。真言宗。入唐(にっとう)八家のひとり。はじめ華厳(けごん)をまなび,のち空海に師事。承和(じょうわ)5年円仁らと唐(中国)にわたり,青竜寺の義真から灌頂(かんじょう)をうける。翌年経典,密壇道具などをもって帰国。山城(京都府)霊巌寺をひらき,四天王寺の初代別当となった。仁寿(にんじゅ)2年3月6日死去。54歳。京都出身。著作に「金剛界記」「霊巌口伝」など。

円行(2) えんぎょう

?-? 平安時代後期,白河天皇皇子
行尊弟子となり,園城(おんじょう)寺にはいる。長承元年(1132)法眼(ほうげん)となった。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の円行の言及

【請来目録】より

…常暁(838‐839年在唐)の求法は揚州に限られるが,経典61巻,図像や法具類が記される。円行(838‐839年在唐)は空海の弟子で,長安青竜寺等に赴き聖教123巻,仏舎利,付嘱物,仏像,曼荼羅,法具を得ている。円仁(838‐847年在唐)は長安,五台山,揚州の各地で求得した聖教類802巻,曼荼羅,図像,高僧像などを列記した総目録と,2種の揚州の目録を作成している。…

※「円行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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