朝日日本歴史人物事典 「円行」の解説
円行
生年:延暦18(799)
平安前期の真言宗の僧。入唐八家のひとり。京都出身。16歳のとき元興寺で出家して華厳宗を修め,のち空海から伝法灌頂を受け密教者となる。承和5(838)年入唐。空海が学んだ長安の青竜寺を訪れ,その死を告げる実恵の音信を手渡した。同寺座主の義真から伝法阿闍梨の灌頂を受け,翌年帰国。山城国(京都府)の霊厳寺や播州の大山寺を開き,天王寺最初の別当に就いたという。当時の人々の意識では,密教は,いわゆる宗教の枠組みにとどまるものではなく,むしろ今日の先端的な科学技術に匹敵する面を持っていた。そのため円行が帰国の際,請来した数々の曼荼羅や密教法具・儀軌は先端科学機器やマニュアルの輸入に通じ,円行自身も密教エンジニアの性格が濃い。<参考文献>守山聖真『文化史上より見たる弘法大師伝』
(正木晃)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報