奈良中期から平安初期に後宮に仕えた女官。ことに孝謙(称徳)女帝に重んぜられた。清麻呂の姉。その名が史料にはじめてみえるのは762年(天平宝字6)女孺,豎子として天皇の勅を伝宣したときで,同年孝謙上皇の出家にしたがい尼となり,法均尼を称した。当時,郡司の子女は采女(うねめ)として出仕したから,広虫もこの例に従い備前国藤野郡より出身したのであろう。そして葛木戸主(かつらぎのへぬし)と結婚した。戸主は中宮職,のち皇后宮職(紫微中台)の官人となったから,広虫も後宮で天皇,上皇の側近としての地位を占めたものと思われる。称徳女帝のもとで従五位下,さらに従四位下に准ぜられ,封戸を賜ったが,道鏡の宇佐八幡宮神託事件にさいし清麻呂とともに除名され,備後国に流された。光仁天皇の即位で770年(宝亀1)京に召され,もとの従五位下に復し,従四位下,典蔵(くらのすけ)となり,桓武天皇のもとで789年(延暦8),典侍(ないしのすけ),従四位上として勅を伝宣している。70歳で没したときは典侍,正四位上で,のち正三位を贈られた。その伝に,藤原仲麻呂の乱連座者の減刑を願って許され,孤児を養子として育て,人となり貞順,節操に欠くるところなく,桓武天皇にはなはだ信重されたとある。
執筆者:平野 邦雄
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(菅原征子)
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奈良末から平安初期の女官。清麻呂(きよまろ)の姉。葛木連戸主(かずらきのむらじへぬし)の妻。762年(天平宝字6)孝謙(こうけん)上皇が落飾し淳仁(じゅんにん)天皇にかわって天下の政をとると広虫も出家して法均(ほうきん)と号した。恵美押勝(えみのおしかつ)の乱(764)後斬刑(ざんけい)にあたる375人の助命を乞(こ)い、流(る)・徒(ず)(懲役刑)に減刑した。乱後の飢疫により捨て児(ご)が増えたが、彼女は83人を収養して子とし、これに葛木首(おびと)姓を賜った。押勝の乱の功により従(じゅ)五位下、勲六等。八幡(はちまん)神教事件にあたり、宇佐(うさ)へ遣わされることになったが、女性の身で遠路に耐えがたしとの理由で弟清麻呂にかわった。結局法均も称徳(しょうとく)女帝(孝謙重祚)の怒りに触れ狭虫(さむし)と改名して備後(びんご)(広島県)に流されたが、のちに召還され典侍(てんじ)正四位上に至り、没後正三位(しょうさんみ)を贈られた。
[黛 弘道]
730~799.1.20
奈良後期の高級女官。備前国藤野郡生れ。もと藤野別真人(わけのまひと)。葛木戸主(へぬし)の妻。和気清麻呂の姉。孝謙太上天皇に仕え,その出家に従い法均と称する。恵美押勝の乱後,斬刑者の助命嘆願,捨て子の養育にもつとめる。765年(天平神護元)従五位下・勲六等。宇佐八幡宮神託事件に連坐して別部狭虫(わけべのさむし)と改名され,備後国に配流された。光仁天皇即位により許されて復位し,785年(延暦4)従四位上に昇る。光仁・桓武両天皇の信任あつく,典蔵(くらのすけ)・典侍(ないしのすけ)を歴任。贈正三位。
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…当時大宰帥は道鏡の弟弓削浄人(ゆげのきよと)であるから,合意のうえの奏上であろう。天皇は夢に八幡神が,神教を聴かせるから尼法均(和気広虫)を派遣せよとあるが,法均は女で軟弱,遠路にたえがたいからと,その弟和気清麻呂を宇佐に派遣した。彼は神前で託宣を請うと,その神託は〈道鏡を天位につかしめば〉という前回と同様であった。…
…京都市上京区に鎮座。和気清麻呂と姉広虫を主神とし,藤原百川(ももかわ),路豊永を配祀する。清麻呂は藤原仲麻呂の乱平定,道鏡追放,平安遷都などで功をあげたが,そのゆかりの神護寺に,平安末期文覚(もんがく)がその霊社を建ててまつっていた。1851年(嘉永4)になり正一位護王大明神の神号が宣下され,さらに明治になり,74年護王神社と改称,別格官幣社となった。86年蛤御門近くの現在地に移し,同時に孤児の養育などに励んだ広虫,また同時期に活躍した百川,豊永を配祀,のち1915年広虫を主神とした。…
…彼女たちの中には後に後宮十二司の上級官職につく者や,五位以上に昇るものもあった。孝謙上皇の側近として,また和気清麻呂の姉として有名な和気広虫も,女孺出身で従四位,典侍にまで昇進した宮人であった。【玉井 力】。…
※「和気広虫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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