宇宙に多量に存在すると考えられている暗黒物質(ダークマター)の一種。英語ではCold Dark Matter、CDMと略称する。冷たい暗黒物質の「冷たい」とは暗黒物質粒子の速度が遅い(温度が低い、重たい)ことを意味する。暗黒物質として想定されるものとして、まず既知の素粒子ニュートリノが候補になった。ニュートリノは速度が速く「熱い暗黒物質」とよばれるものの代表である。ニュートリノはほとんど物質との相互作用もなく、また中性なので電磁相互作用もない(光を出さない)ことから、質量が「ゼロ」と考えられていた。このニュートリノが質量をもてば、暗黒物質として適当であるとみられていた。そしてスーパーカミオカンデなどの実験でニュートリノに質量がありそうなことがはっきりしたが、その質量はかなり小さいことが判明しつつある。また宇宙の大規模構造形成のシミュレーションからニュートリノが暗黒物質だとすると、初期の宇宙の「ゆらぎ」をならしてしまい(速度の速いニュートリノが相互作用して「ゆらぎ」を平均化してしまう)、大規模構造が形成できないことが判明し、暗黒物質の本命はニュートリノのような「熱い暗黒物質」ではなく「冷たい暗黒物質」であろうと考えられるようになった。しかしその正体は依然不明でアクシオン、ニュートラリーノなどの未発見粒子が考えられていて、XMASS(エックスマス)などによる直接検出やLHC(大型加速器)などでの生成探索が続いている。
[編集部 2023年2月16日]
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