翻訳|dark matter
光や電波では観測できない正体不明の物質。宇宙の質量の27%を占めると考えられている。銀河が回転していても遠心力でばらばらにならないのは、中心部に重い物質があって重力で引き留めているためだとして、1970年代に存在が提唱された。宇宙の質量の残りは、星や銀河などをつくる物質が5%、「暗黒エネルギー」が68%とされる。ビッグバンで始まった宇宙に星や銀河が誕生したのは、暗黒物質の重力に通常の物質が引き寄せられたためで、暗黒物質がなければ現在のような宇宙にはならなかったとみられている。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
光を星のように放出することはない、みえない物質。「ダークマター」ともよばれる。重力によってのみその存在がわかる。銀河系の質量は、光学的な測定から求めた恒星の数、あるいはその回転運動の速度から推定できる。一方、銀河系内には水素ガスが漂っており、水素原子から発生する電波によっても銀河の広がりや質量が推定できる。ところが、この方法で得た銀河の質量は、光っている星の測定で求めた質量の10倍も大きくなる。このことから、可視光で観測されている銀河円盤の外に、光や電波を放出したり吸収することのない正体不明の物質が大量にあり、水素ガスは重力によってそれらの物質に引き寄せられ回転しているのではないかと考えられている。暗黒物質の正体についてはアクシオン、ニュートリノ、超対称粒子などいくつかの候補があげられているが、確実な証拠は得られていない。近年、暗黒物質についてニつの有力な観測がなされた。一つは、素粒子観測装置スーパーカミオカンデにおける、太陽から飛んでくる電子ニュートリノが他のニュートリノにかわったという、いわゆるニュートリノ振動の観測である。これは、ニュートリノが質量をもつときに限りおこりうる。他の一つは、1997年、理化学研究所とマックスプランク研究所のグループが発見した暗黒銀河団で、約90億光年離れた宇宙の彼方に銀河数百個分の質量をもつ天体を発見した。この天体は光を発することがなく、X線を利用してはじめて観測できた。ニュートリノおよび暗黒銀河団は、暗黒物質の候補になるものとして注目を集めている。なお2007年(平成19)1月、ハワイのマウナ・ケア山頂にある世界最大の光学望遠鏡「すばる」により、暗黒物質の3次元的な空間分布が世界で初めて測定され、暗黒物質が大規模構造を形成していることが明らかになった。
[広瀬立成]
『須藤靖著『ダークマターと銀河宇宙』(1993・丸善)』▽『M・リオーダン、D・N・シュラム著、青木薫訳『宇宙創造とダークマター――素粒子物理からみた宇宙論』(1994・吉岡書店)』▽『大浜一之著『宇宙を支配する暗黒物質(ダークマター)とは何か!?――人類起源から量子論まで、解かれざる謎に最新科学が挑む』(1996・PHP研究所)』▽『ジョン・グリビン、マーティン・リース著、佐藤文隆・佐藤桂子訳『宇宙の暗闇・ダークマター――暗黒物質が解く宇宙進化の謎』(講談社・ブルーバックス)』
(二間瀬敏史 東北大学大学院理学研究科教授 / 2007年)
(尾関章 朝日新聞記者 / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
宇宙空間に存在する,光や電波などの観測では見えない物質の総称.多数の銀河や銀河間に存在する高温ガスが逃げていかないことや,銀河の形が保たれていることを説明するためには,観測にかかる物質の10倍から100倍に達する暗黒物質が宇宙を満たしている必要がある.暗黒物質の候補として,暗い赤色矮星,白色矮星,褐色矮星やニュートリノ,理論(超対称性標準モデル)的に存在が推定される素粒子(ニュートラリーノ)などが考えられている.このなかで白色矮星,赤色矮星は,2001年にハッブル(Hubble)宇宙望遠鏡などを使って観測された.素粒子の探査も,地底の検出装置を用いて日本やヨーロッパで試みられている.検出装置は素粒子と媒質との相互作用による発光(媒質:ヨウ化ナトリウム,液体キセノンなど),発熱(媒質:ゲルマニウム,ケイ素など)を利用する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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