裁判所が刑事事件について審理裁判する権限。裁判権は司法権とほぼ同義であり、日本では、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」(憲法76条1項)。原則として、国籍のいかんにかかわらず、日本国領土内にいるすべての者に及ぶが、国内法上の例外として、象徴たる地位にある天皇、在任中訴追されないことになっている摂政(せっしょう)(皇室典範21条)、それに国事行為の臨時代行者(国事行為の臨時代行に関する法律6条)があげられるのが通例である。国際法上の例外としては、国家元首、外交官およびその家族構成員がある(外交関係に関するウィーン条約第31条、37条)。また、日本に駐留するアメリカ合衆国軍の構成員および軍属については、優先的裁判権が所属国にある場合がある(日米安保条約第6条に基づく合衆国軍隊の地位に関する協定=日米地位協定〈昭和35年条約第7号〉第17条)。
[大出良知]
…国家統治権の一部であり,司法権と同義であるが,その及ぶ事件または人との関係を問題とするときは裁判権というのが普通である。民事裁判権(非訟裁判権,行政裁判権を含む)と刑事裁判権に大別される。民事裁判権は,裁判によって法律関係を確定または形成し,執行によって権利を強制的に実現する権限を,刑事裁判権は,犯罪事実を認定し犯人に対して刑罰その他の処分を定める権限を,その主要内容とする。…
※「刑事裁判権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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