ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「前期量子論」の意味・わかりやすい解説 前期量子論ぜんきりょうしろんclassical quantum theory 1900年 M.プランクによってエネルギー量子が発見され,25年に量子力学が確立されるまで展開された量子論。量子の考えは,A.アインシュタインの光量子説による光電効果の説明,固体の内部振動に振動量子の考えを導入したアインシュタインや P.デバイによる固体の比熱式の導出,N.ボーアの水素原子の理論,さらに一般の原子構造論やスペクトルの理論など,輝かしい成果を収めた。しかし,これらの理論では,ニュートン力学やマクスウェルの電磁理論を適用していながら,一方ではそれらと矛盾する仮定や条件を付加しており,決して満足な理論ではなかった。たとえば,光は光量子として粒子的性質をもつが,同時に干渉や回折を理解するためには電磁波として波動的性質ももたなければならない。この粒子と波動の二重性を説明するためにボーアは相補性原理を提案した。またボーアは水素原子の理論で,電荷をもつ電子が安定な軌道運動をし,軌道間の遷移の際にだけ光量子として光を放出するとしたのは,マクスウェルの電磁理論に反していながら,放出光の強さやかたよりを説明するためには電磁理論と対応させて考察するという対応原理に依存しなければならなかったからである。こうした矛盾は量子力学によって初めて解消された。量子説を古典的な力学や電磁気学に従って展開し,内部矛盾を含みながらも真実を解明していった過渡的な量子論が前期量子論である。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報 Sponserd by