日本大百科全書(ニッポニカ) 「副交感神経遮断薬」の意味・わかりやすい解説
副交感神経遮断薬
ふくこうかんしんけいしゃだんやく
コリン遮断薬あるいは抗コリン作動薬ともいう。アセチルコリンの副交感神経節後線維の末端での作用をムスカリン様作用といい、これに拮抗(きっこう)するのがアトロピンである。したがって、副交感神経遮断薬の代表的薬物はアトロピンであり、この種の薬剤は鎮痙(ちんけい)剤として、また消化性潰瘍(かいよう)治療薬として繁用されている。硫酸アトロピンは瞳孔(どうこう)散大、眼圧亢進(こうしん)、分泌腺(せん)機能低下、平滑筋諸器官の弛緩(しかん)、心拍数増などの薬理作用をもち、胆石(たんせき)や腎(じん)石の仙痛、胃・腸・膀胱(ぼうこう)・尿道などのけいれん性疼痛(とうつう)、消化性潰瘍、胃酸分泌過多、有機リン中毒、副交感神経興奮剤中毒などを適応とし、アトロピンを有効成分とするロートエキスもよく用いられている。なお、アトロピン類似化合物およびアトロピンの化学構造から新たに合成された消化性潰瘍剤として第三級アンモニウム塩や第四級アンモニウム塩が多く開発された。類似化合物としては臭化ブチルスコポラミン、塩化メチルアトロピンなどがあり、そのほか臭化メチルベナクチジウム、臭化プロバンテリンをはじめとする多くの抗コリン作動薬が市販されている。
[幸保文治]