日本大百科全書(ニッポニカ)「労農同盟」の解説
労農同盟
ろうのうどうめい
労働者階級と農民階級が、それぞれの階級的利益を相互に擁護しあい、相互にそれぞれの闘争を援助しあい、共通の利益に基づいて支配階級とその国家権力に対する共同闘争を行うという、マルクス主義の用語。労農同盟の思想自体は、マルクスやエンゲルスにすでにみられたが、農民国ロシアにおいて革命運動を指導したレーニンは、帝国主義段階においてブルジョア階級がブルジョア民主主義革命の旗を放棄し、プロレタリアートのヘゲモニーのもとに労働者と農民が共同して革命を遂行しなければならないとして、労農同盟論を唱えた。20世紀においても、労働者階級と農民は社会の物質的富を直接に生産する二大階級であり生産力の担い手であること、労働者と農民をあわせ政治的に同盟すると人口の圧倒的多数を占めること、帝国主義や独占資本の支配のもとで労働者も農民もともに搾取され収奪されていること、などの根拠から、革命勢力は労農同盟を基礎に構築される、と定式化された。この階級同盟は、社会経済的利害関係のレベルで構成されるが、より具体的な政治的次元では、労働運動組織(労働者政党、労働組合等)と農民組織(農民政党、農民組合等)の日常的な「労農提携」や、政治目標をもった「労農統一戦線」が提唱された。ロシア革命後の社会主義政権は「労農民主独裁」ともいわれた。労働者の多くが農村出身者で構成されたわが国でも、労農同盟論は戦前から主張されてきた。
[加藤哲郎]
『マルクス、エンゲルス、レーニン著、日本共産党中央委員会宣伝部編『労農同盟論』全3巻(大月書店・国民文庫)』