動物咬傷(読み)どうぶつこうしょう(その他表記)Animal bite

六訂版 家庭医学大全科 「動物咬傷」の解説

動物咬傷
どうぶつこうしょう
Animal bite
(外傷)

どんな外傷か

 哺乳類によって()まれた(そう)(傷のこと)をいいます。イヌやヒトの口腔内は雑菌が多数存在し、また唾液などの消化酵素を含んでいるため、組織の融解(ゆうかい)壊死(えし)や感染の合併が非常に多く起こります。

 最も多いのがイヌによるものですが、咬む力が強いので、組織の挫滅(ざめつ)を伴います。狩猟犬や闘犬など気性の荒いイヌでは、死亡することもあります。ネコは牙が細くて鋭いため、傷は小さくても奥深く突き立てられるので感染が多く起こります。ヒトの口腔の細菌数はイヌ・ネコよりも多く、ヒトによる咬傷は感染が多いとされています。

症状の現れ方

 感染を起こすと発赤、腫脹(しゅちょう)はれ)、疼痛を伴い、膿性の分泌物が認められます。

治療の方法

 汚染創であり、創を清浄化(洗浄・消毒)しても無菌にすることは困難です。したがって、咬傷は縫合しないのが原則で、創周辺の挫滅組織を切除して洗浄・消毒をしたのち、開放したまま治療します。

 破傷風(はしょうふう)の予防のために、抗生物質とともに、患者さんの免疫状態に応じてトキソイド破傷風免疫ヒトグロブリンを投与します。

 なお、近年狂犬病国内ではまったく発生がないので、特別な事情がないかぎり、狂犬病の免疫療法は行われていません。

吉岡 敏治

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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