化学増感(読み)カガクゾウカン

化学辞典 第2版 「化学増感」の解説

化学増感
カガクゾウカン
chemical sensitization

写真作用のような光化学現象.光伝導のような光物性的現象において,添加物によって固有感光域における光感度を増大させる現象を化学増感といい,そのような添加物を化学増感剤という.ハロゲン化銀写真においては,ゼラチン水溶液中でハロゲン化銀粒子を形成し,この乳剤を水洗いしてイオンを除去した後,化学増感剤を添加して反応させる.これにより,粒子表面あるいは内部に化学増感中心が形成される.チオ硫酸ナトリウムなどの硫黄化合物による硫黄増感では,光電子トラップとなる硫化銀分子凝集体が形成され,塩化金酸などによる金増感では,現像可能となる最小の潜像サイズが小さくなると考えられている.この両者通常併用される.塩化スズ(Ⅱ),ヒドラジンなどによる還元増感では,銀核(Ag2 と考えられている)が形成される.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「化学増感」の意味・わかりやすい解説

化学増感
かがくぞうかん
chemical sensitization

化学的な作用により,写真の感光性を高める増感方法。たとえばハロゲン化銀写真の感光乳剤の製造工程において,乳剤中に還元剤や硫黄化合物,貴金属塩 (通常は金塩が用いられる) を微量加えると,ハロゲン化銀結晶に対するこれらの物質化学作用により,ハロゲン化銀自身の感度が増大する。

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世界大百科事典(旧版)内の化学増感の言及

【写真乳剤】より

…写真乳剤はゼラチン水溶液中で,水溶性銀塩(例えば硝酸銀)と水溶性ハロゲン化アルカリ(例えば臭化カリウム)の複分解によりハロゲン化銀微粒子を形成して調製する。写真感度を高めるために,種々の増感法(通常は化学増感と分光増感)が乳剤に施される。化学増感は,乳剤に増感剤を添加して加熱かくはんすることにより粒子表面に微量の不純物を導入し,感光波長域を変えずに写真感度を増加させるために用いられる。…

【増感】より

…ちなみに,銀板の感度は現在のISO感度で表すと0.01程度と推定される。写真感光材料の感度は図に示すように年代とともに高くなっているが,これは技術的には現像法の発明,臭化銀ゼラチン乳剤の発明,分光増感技術,化学増感技術,乳剤技術の進歩に負っている。1983年にはISO1000のカラーネガフィルムが発売され,また拡散転写法のインスタントフォトグラフィーではISO20000の黒白感光材料も市販されているので,銀板写真と比べると写真感光材料の感度は105倍も高くなっている。…

※「化学増感」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」