日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化スズ」の意味・わかりやすい解説
塩化スズ
えんかすず
tin chloride
(1)塩化スズ(Ⅱ) 二塩化スズともいう。スズを塩酸に溶かした溶液から二水和物SnCl2・2H2Oが得られる。二水和物を無水酢酸と混合すると無水塩が得られる。無水塩は水、エタノール、エーテルに易溶。二水和物は無色の単斜晶系結晶。融点37.7℃(分解)。水に溶けやすく、多量の水に溶かすと加水分解して塩基性塩が沈殿するが、塩酸を加えるとトリクロロスズ(Ⅱ)酸イオンSnCl3-を生じて溶ける。アルコール、酢酸エチル、氷酢酸などに溶ける。強い還元剤で、分析試薬、有機化学での還元剤、媒染剤、めっきなどに用いられる。
(2)塩化スズ(Ⅳ) 四塩化スズともいう。スズに直接塩素ガスを通しながら蒸留すると得られる。無色の発煙性液体。水に発熱して溶け、ゆっくり加水分解して酸化スズ(Ⅳ)のコロイドとヘキサクロロスズ(Ⅳ)酸H2SnCl6を生じる。有機溶媒に溶ける。媒染剤、縮合剤として、また有機スズ化合物の原料として用いられる。無水和物は代表的な陽イオン重合触媒の一つである。水溶液からは五水和物SnCl4・5H2Oが得られる。これは無色単斜晶系結晶。融点約60℃。19~56℃で安定。
[守永健一・中原勝儼]
塩化スズ(データノート1)
えんかすずでーたのーと
塩化スズ(Ⅱ)
SnCl2
式量 189.6
融点 246.8℃
沸点 623℃
比重 3.95
結晶系 斜方
溶解度 55.4g/100g(水18℃)
塩化スズ(データノート2)
えんかすずでーたのーと
塩化スズ(Ⅳ)
SnCl4
式量 260.52
融点 約-33℃
沸点 112~116℃
比重 2.2328