光伝導(読み)コウデンドウ(英語表記)photoconduction

デジタル大辞泉 「光伝導」の意味・読み・例文・類語

こう‐でんどう〔クワウデンダウ〕【光伝導/光電導】

絶縁体半導体に光を当てると、自由電子が増加して伝導率が増す現象。光の強弱で電流の大きさを変えることができ、電子写真撮像管露出計などに利用。内部光電効果

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精選版 日本国語大辞典 「光伝導」の意味・読み・例文・類語

こう‐でんどうクヮウデンダウ【光電導・光伝導】

  1. 〘 名詞 〙 光電効果の一つ。ある種の絶縁体や半導体に光を照射した時、自由電子が増加して電気抵抗が減少する現象。光の強弱を電流の変化に変えることができる。内部光電効果。

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改訂新版 世界大百科事典 「光伝導」の意味・わかりやすい解説

光伝導 (ひかりでんどう)
photoconduction

物質は電気伝導という視点からとらえると,導体,半導体と絶縁体に大別される。しかし絶縁体や比較的伝導度の小さい半導体でも,例えば可視域や赤外領域の光をあてると電気伝導度が著しく増加し電流(光電流という)が流れることがある。このような現象を光伝導という。〈こう〉伝導という場合も多い。歴史的には,光伝導の現象はすでに1870年代にセレンで見いだされていたが,その機構を理解できるようになったのは,固体物理学が誕生した1930年前後以降のことであり,さらにテレビカメラなどエレクトロニクスの分野などで積極的に実用化されるようになったのは50年代半ば以降のことである。

 絶縁体や低温での半導体では,それが結晶でも非晶質でも,ふつう,電子は原子核に近い内殻や価電子帯(または局在準位)と呼ばれる各原子の低いエネルギー状態,いわば束縛状態のみを満たしていて,電気伝導は生じない。ところがこれらの物質に,それらに固有な禁止帯(または局在準位の深さ)といわれるエネルギー差より大きいエネルギーをもつ光(光子としてのエネルギーは,プランク定数h波長をλ,光速度をcとするとch/λで与えられるから,波長が短いほどエネルギーは大きくなる)を照射すると,電子はより高いエネルギー状態にあたる伝導帯に励起されて,自由に運動しうる伝導電子となる。半導体の場合は価電子帯に電子が抜けた穴(正孔)ができ,この正孔も電流の担い手となる。これらの伝導電子や正孔は有限の寿命をもつが,少なくともその間は伝導度は光の強度に対応して著しく増大する。ただし,上記の禁止帯のエネルギー幅(または局在準位の深さ)が有効な光の波長の最大限界値を与えるので,光伝導を利用する場合にはそれに適合した物質を選択または作製することが必要である。具体的な物質としては,紫外から可視域の中心部にかけてはCdS,CdSe,やや赤色領域まで伸びたものとしては単結晶SiやSb2S3,As2Se3,さらに改善されたものとしては非晶質a-Si:Hが開発されている。近赤外ではPbSe,PbTe,InSb,PbSnTeなどのほか,より長波長側ではCdxHg1-xTeや不純物を添加したGe(Au),Ge(Hg),さらにSi:Gaなどが用いられる。また光応答性の速いものを必要とする際には,逆方向バイアスをかけたSiのPINダイオードがあるが,応答速度にも光の波長依存性がありうることは注意しておく必要があろう。

 光伝導のもっとも身近な利用例は,可視,赤外光を用いた自動扉開閉装置や警報装置であり,一方,技術的に高度なものとしては,工業用および放送用テレビカメラから,人工衛星制御装置,赤外線による地上観測装置のほかオプトエレクトロニクスの細部などにまで及んでいる。
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百科事典マイペディア 「光伝導」の意味・わかりやすい解説

光伝導【ひかりでんどう】

絶縁体,半導体に光を当てたときその電気伝導率が増加する現象。内部光電効果の一つで,電子が光エネルギーを吸収して伝導帯に上がり,自由電子や正孔を生ずるため起こる。絶縁体ではハロゲン化銀,硫化亜鉛等,半導体ではケイ素,セレン,硫化カドミウム,硫化鉛,セレン化鉛等が光伝導を示し,電場をかけて光を当てれば光の強さに対応した光電流が得られるので,測光に利用される。→光導電セルフォトダイオード
→関連項目光電素子ビジコン有機半導体

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「光伝導」の意味・わかりやすい解説

光伝導
ひかりでんどう
photoconduction

半導体絶縁体に光を当てたとき,電気伝導度が増加する現象で,光電子放射と区別して内部光電効果とも呼ばれる。照射した光が,試料中の価電子帯または不純物準位にある電子を励起して,自由な電子や正孔を生じ,外部から加えた電場によってそれらが結晶中で移動するために電流が流れる。光電流の大きさは,照射によって発生した電子または正孔の数や電場に一定の範囲内で比例するが,結晶中での自由電子または自由正孔の寿命や移動度にも関係する。たとえば,電子や正孔が試料と電極の境界面でなんらの障害も受けずに移動できるオーミックコンタクトの場合と違って,試料が絶縁層を介して電極と接触している場合には電場を強くしても,光電流は増加せずに飽和することが多い。一般に飽和電流値は電極間の距離が小さいほど小さくなる。硫化カドミウムや硫化鉛は光伝導性が強く,光伝導 (光導電) セルの名で光の強度測定やカメラの露出計などに応用されている。

光伝導
こうでんどう

光伝導」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の光伝導の言及

【光電効果】より

…光電効果には,固体表面から光電子が放出される外部光電効果や,原子などから光電子が放出され,イオン化する光イオン化などがある。また光照射により絶縁体や半導体中の伝導電子が増加し電気伝導度が増加する内部光電効果(光伝導ともいう),ならびに光照射により起電力を生ずる光起電力効果も光電効果の一種である。 光電効果は,量子力学誕生の端緒となった物理現象の一つとして,物理学史上,その発見の意義は大きい。…

【電気伝導】より

…これを不純物伝導という。また光励起によって発生した担体によって,半導体またはイオン結晶中に生ずる電気伝導は,光伝導と呼ばれる。 イオン結晶,電解質溶液,溶融塩などにおいては,イオンの運動によって電流が運ばれる。…

【光伝導】より

…しかし絶縁体や比較的伝導度の小さい半導体でも,例えば可視域や赤外領域の光をあてると電気伝導度が著しく増加し電流(光電流という)が流れることがある。このような現象を光伝導という。〈こう〉伝導という場合も多い。…

※「光伝導」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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