改訂新版 世界大百科事典 「化工デンプン」の意味・わかりやすい解説
化工デンプン(澱粉) (かこうでんぷん)
modified starch
化学的・物理的手段あるいは酵素などを用いて,天然デンプンの高分子特性,利用物性を改良した処理デンプン。デンプンを化学的に,あるいは酵素を用いて処理すると,粘度,のりの透明度,接着性,のりの安定性などの利用物性が非常に改良されたものが得られる。化工デンプンの中にはデキストリン,酸化デンプン,酵素処理デンプン,αデンプン,デンプン誘導体(リン酸デンプン,カルボキシメチルデンプン,橋架けデンプン,陽性デンプン等)がある。種々の処理を行うことにより,天然デンプンでは得られないような高粘性,低粘性あるいは冷水に溶ける性質を与えることができる。またデンプンは,水と加熱するとのりになるが,橋架け反応を行うと120℃に加熱しても膨潤しないものも得られる。また逆に洗濯用ののりで,水に溶かすだけで使えるα化デンプンなども化工デンプンの一種である。
最近,冷凍食品,食品のコールド・チェーンが発達し,老化しないデンプンに対する需要が著しく増している。このような要望にこたえるために,リン酸誘導体などの新しい化工デンプンが開発されてきている。化工デンプンは日本で年間10万~12万t程度生産されているが,用途は広く,表面サイジング,湿潤強度の増強等の目的で製紙,繊維の経糸のり,食品の増粘・粘度安定剤,低温貯蔵した際の劣化防止剤,保水剤,ケーキミックスなどの生地の改質等幅広く用いられている。そのほか養鰻餌料,接着剤,印刷の裏うつり防止剤,乾電池のセパレーター,捺染,鋳造用砂型等に使われている。
→デンプン
執筆者:貝沼 圭二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報