知恵蔵 「医療ビッグデータ法」の解説
医療ビッグデータ法
ビッグデータは、インターネットの普及や、コンピューターの処理速度の向上などに伴い取り扱うことが可能になってきた、非定型でかつリアルタイム性の高い、大容量のデジタルデータである。ビッグデータを活用すれば、これまで予想できなかった新たなパターンやルールを発見できることが明らかとなっている。したがって、医療ビッグデータにより、将来起こりやすい病気を、発症前に診断したり予測したりする「先制医療」や、各々の患者の体質に応じた医療を提供する「個の医療」の実現と、新薬や医療機器の開発などが期待される。
同法では、国が認定した事業者が、病院、診療所、薬局などから患者の氏名や治療内容、検査データなどの情報を収集し、匿名化して、製薬会社や研究機関に提供する。なお、認定事業者には、すでに複数の医療機関の情報を扱っていて、かつ事業開始時に年間100万人以上の情報を集められる体制である組織が想定されている。更に、医療ビッグデータに関しては、サイバー攻撃などによる情報漏洩(ろうえい)や悪用、患者を始めとする情報提供者のプライバシーの侵害などといった問題が懸念されるため、認定事業者は、国の審査によって、高い情報セキュリティーを確保しているとみなされた組織に限られる。また、医療機関においては、初診時に書面で患者に情報提供の同意を求め、患者が提供を拒否しない場合のみ情報提供を可能としている。
国は将来的に年間5千万人規模の情報収集を目指している。
(横田一輝 ICTディレクター/2018年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報