医療ビッグデータ法(読み)いりょうびっぐでーたほう

知恵蔵 「医療ビッグデータ法」の解説

医療ビッグデータ法

病名症状、治療方法、検査データなどの情報を、病院などの医療機関から収集して、「医療ビッグデータ」として企業や研究機関に提供し、活用する方法などを規定した法律。正式名称は「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」。「次世代医療基盤法」とも呼ばれる。2018年5月11日に施行された。
ビッグデータは、インターネットの普及や、コンピューター処理速度の向上などに伴い取り扱うことが可能になってきた、非定型でかつリアルタイム性の高い、大容量のデジタルデータである。ビッグデータを活用すれば、これまで予想できなかった新たなパターンルールを発見できることが明らかとなっている。したがって、医療ビッグデータにより、将来起こりやすい病気を、発症前に診断したり予測したりする「先制医療」や、各々の患者体質に応じた医療を提供する「個の医療」の実現と、新薬や医療機器の開発などが期待される。
同法では、国が認定した事業者が、病院、診療所、薬局などから患者の氏名や治療内容、検査データなどの情報を収集し、匿名化して、製薬会社や研究機関に提供する。なお、認定事業者には、すでに複数の医療機関の情報を扱っていて、かつ事業開始時に年間100万人以上の情報を集められる体制である組織が想定されている。更に、医療ビッグデータに関しては、サイバー攻撃などによる情報漏洩(ろうえい)や悪用、患者を始めとする情報提供者のプライバシー侵害などといった問題が懸念されるため、認定事業者は、国の審査によって、高い情報セキュリティーを確保しているとみなされた組織に限られる。また、医療機関においては、初診時に書面で患者に情報提供の同意を求め、患者が提供を拒否しない場合のみ情報提供を可能としている。
国は将来的に年間5千万人規模の情報収集を目指している。

(横田一輝 ICTディレクター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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