精選版 日本国語大辞典 「卮子」の意味・読み・例文・類語
くち‐なし【梔子・巵子】
- 〘 名詞 〙
- ① アカネ科の常緑低木。本州中部以南、四国、九州の暖地の主として海岸に近い林に生え、また、庭木、切り花用として栽培される。幹はよく分枝し、高さ二メートルぐらいになる。葉は光沢があり、長さ六~九センチメートルの楕円形で先はとがり、短柄をもち対生する。初夏、枝の先端に径六~八センチメートルの高盆状の六弁花を単生する。花は初め白色でのち淡黄色に変わる。果実は長さ約三センチメートルの長楕円形で、萼(がく)筒に包まれたまま黄赤色に熟す。果実は古くから黄色染料に用いられ、漢方では山梔子(さんしし)といって利尿剤にする。詩歌では「口無し」とかけていうことが多い。漢名、巵子、または、梔子。
▼くちなしの花《 季語・夏 》
▼くちなしの実《 季語・秋 》
- [初出の実例]「土毛(くにつもの)は支子(クチナシ)莞子(かま)及び種々の海つ物等多(にへさ)なり」(出典:日本書紀(720)天武一〇年八月(北野本訓))
- 「口なしの花さくかたや日にうとき」(出典:俳諧・新花摘(1784))
- ② 「くちなしいろ(梔子色)①」の略。
- [初出の実例]「仍賚二五位已上被、主典已上支子(くちなし)袍帛袴」(出典:続日本紀‐天平一四年(742)正月丙辰)
- 「御れうにあるくちなしの御衣(ぞ)ゆるし色なるそへて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
- ③ 「くちなしいろ(梔子色)②」の略。
- ④ 紋所の名。梔子の花に形どったもの。梔子、三つ横見梔子などの種類がある。
- 梔子@三つ横見梔子
- ⑤ ( 「助言は無用」の「口無し」を梔子の実にかけて ) 俗に碁盤、将棋盤の脚の部分をいう。くちなしあし。